否定形を超えた名に
色つきが当たり前になって「モノクロ写真」「白黒テレビ」の言葉が生まれた。ケータイの全盛下、デスクに鎮座する従来型には「固定電話」という呼称が付いた。再命名は、区別する必要から生まれた苦肉の知恵でもある。
〈新たな技術や概念の登場により、既存の言葉では対象を十分に示すことができなくなった場合、再命名が促される。既存の言葉(例えば電話)は、新語(携帯電話)と再命名(固定電話)を包含する上位概念に昇格する〉というわけだ。
いずれ、クルマと言えば「電気自動車」のことになりそうだし、エンジンがある旧来型は「内燃車」あたりに置き換わるだろう。
「回らない寿司屋」に関しては、日常語として定着しているとは思えない。
「寿司でも食おうか」「スシロー?」「いや回らないほうで」といった会話は普通に交わされているだろうが、「回らない寿司屋」は新語としては長すぎる。「無回転寿司」「固定寿司」「不動寿司」「対面寿司」「本格寿司」...どれもしっくりこないのだが。
金田一さんがあえて「回らない」話から始めたのは、身近で分かりやすい事例だからと思われる。いまや寿司屋にも色々あって、各自の認識はさまざま。とりわけご馳走になる側にすれば、回るのか回らないのか、これが最大の関心事である。
「回らないほう」にもそろそろ、否定形ではなく前向きな、格と出費に見合う気の利いた呼称がほしい。
冨永 格