クリスマス・イヴに大西洋を渡った「放送」は、音楽史を変えるきっかけとなった

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不特定多数に「放送」

   ・・・とここまでは、「電波の歴史」なのですが、フェッセンデンが行ったクリスマス・イヴの実験放送は、その後の音楽を大きく変えてしまう要素が詰まっていました。

   フェッセンデンは、ヘンデルの有名なオペラ・アリア「オンブラ・マイ・フ」のレコード音声、そして、自分のヴァイオリン演奏と歌、最後に聖書の言葉を引用した結びの言葉を「放送」したのです。

   彼は、大西洋の反対側、スコットランドの受信設備にいた研究仲間が聞いてくれるだろう、と考えていたのですが、まぎれもない不特定多数に向けた「放送」だったので、大西洋を航行中のユナイテッド・フルーツ社の貨物船も受信してしまったのです。果物相場の価格を知ろうと、モールス信号を受信している最中に、いきなり放送開始の合図が割り込み、その後音楽が聴こえてきたのですから、さぞかし無線技師は驚いたに違いありません。

   ちなみにフェッセンデンのヴァイオリンと歌の腕前がどのようであったのかは伝わっていませんが、音声をとどけられる新しい放送に、「声」だけでなく、まず「音楽」を取り入れたのは、彼の重要な功績でした。

本田聖嗣プロフィール
私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でピルミエ・ プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目CDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラ マ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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