追悼のレクイエムも作曲していた
哀愁に満ちたメロディラインを、緩急自在に奏でる超人的なテクニシャン――ジャンゴは同世代や後世の米国のジャズミュージシャンに多大な影響を与えた。モダン・ジャズ・カルテット(MJQ)の「ジャンゴ」(1954年)など、トリビュート曲は少なくない。映画では全編に彼の再現演奏が流れ、ジャンゴ役の俳優は、本物そっくりの素早い指の動きを見せる。おそらく相当練習したはずだ。それとも特撮なのか。いずれにしろたいしたものだと、変なところで感心してしまう。
映画は、ナチスからの逃避行の途中で、ジャンゴが、犠牲になったロマを追悼するレクイエムを作曲していたことも明かす。これも新事実だ。ナチスドイツが敗北し、撤退した後に、ジャンゴはその曲をパリで発表したそうだ。映画でもエンディングの場面でオーケストラとコーラスによる演奏風景が流れ、客席のロマや、共にナチスと闘ったレジスタンスの仲間が涙を流す。残念ながら現在は楽譜の一部分しか残っていないという。