伝統を守り育てていく努力、復活させる努力
ラガヴァリンというアイラ島の蒸留所。嬉しそうな背中が嶋田君だ
スコッチの原料となるモルト。麦の芽が出ている
キルホーマンは酒造に関わる様々な人々と他のスコッチ蒸留所の尽力によって復活した蒸留所だ。この蒸留所は100%この島の産物で作られているのを自慢としている。麦も自前で育てている。伝統を復活させる努力がここでは払われている。
そしてさらに新しい、9カ所めの蒸留所、ポート・シャーロットが動き始めたとのこと。こちらはまだウィスキーを公表していない。
産業としてのスコッチ造りの基盤がしっかりしていないのは、蒸留所の浮き沈みが示している。伝統を守り育てていくのは日本に限らず大変な努力がいるのだろう。
かつて地元だけで消費されていたスコッチは今では世界という市場を手にしている。きっと、市場が大きくなったところで生産調整がうまくいかなくなって、蒸留所の浮き沈みが出たのだろう。生き残ったところ、消えていったところ、そして力を合わせてもう一度生まれたところ。伝統はまさに勝ち抜き戦になっている。
アイラ島を知った今、嶋田君にとってウィスキーはいっそう味わい深いものになっているだろう。僕ですら、すこし味わいが深く感じられるようになったくらいだ。
坂井直樹