歯医者では「カチカチ」、コンサートでは「パチパチ」、おなかが空いたら?
記事では、実際に記者が日本での暮らしで直面したオノマトペも紹介されています。
pera pera(ペラペラ):fluent in a language(言葉に精通している)
peko peko(ペコペコ):you are really hungry(おなかがとても空いている)
pachi pachi(パチパチ):breaking into applause(拍手喝采する)
このほかにも、歯医者では「kachi kachi(カチカチ)」してくださいと言われるなど、私たちが無意識のうちに擬音語をたくさん使っていることにあらためて気づかされます。たしかに、歯医者でいきなり「カチカチしてください」と言われたら、日本語を知らない方は困惑しそうです。
一説によると、日本語のオノマトペは4000~5000語あるとか。正確な数はわからないようですが、他の国の言語と比較して多いことは間違いなさそうです。なぜ、日本語ではオトマトペが多いのでしょうか。
理由の1つとして専門家があげているのが、他の言語では様態を含む動詞が日本語よりも多い、という特徴です。
たとえば英語では、「drizzling」(しとしと降っている)、「pouring」(ザーザー降っている)など、雨がふる様態をひと言で表す動詞があります。「giggling」(くすくす笑っている)、「guffawing」(ゲラゲラ笑っている)もそうですが、的確な英単語を知っていたら、一発で正確に状況を伝えることができます。
果たして、日本語のオノマトペを覚える方がラクなのか、英語の動詞を覚える方がラクなのか...。どちらがラクかわかりませんが、日本語のオノマトペの方が、使い方を間違えると厄介そうです。
「私はおなかがpera pera(ペラペラ)だ」とか、「あなたは英語がpeco peko(ペコペコ)ですね」と言ってしまったら...。そう考えると、日本語を学ぶ外国人の方が間違った表現をしても、笑ったり茶化したりしないようにしようと、肝に銘じたくなります。
今回、ガーディアンの記事をきっかけに、母国語ではない言葉で相手に何かを伝えること、について考えてみました。思い出したのは、さきほど少し触れましたが、私が胃痛でロンドンの病院に駆け込んだ時のことです。
現地の病院は初めてのことで、専門用語に不安があった私は日本人の通訳の方に付き添ってもらうかたちでお医者さんと対面しました。最初のうちは通訳を通じてコミュニケーションをとっていたのですが、より正確に状況を知りたい、伝えたいという医者と患者(私)は、そのうち身振り手振りで「会話」をすることに...。
まるで、パントマイムの役者のように大げさなパフォーマンスのおかげで(!)、意思疎通ができたのでしょう。お医者さんは満足そうに診断書を書いて薬を処方してくれました。同じく、不安が解消できて、満足気に病室を去ろうとした私に、通訳の方が放ったひと言。
「そんなに身振り手振りがお上手だったら、通訳は必要ありませんね!」
通訳の方のひと言が、イヤミだったのかどうかはわかりませんが(?)、「人間、イザとなれば身振り手振りで意思疎通ができる」と学んだことは貴重な経験でした。ふしぎなことに、そう思ったとたん、気持ちをラクにして英語を学ぶようになったのです!
母国語以外の言葉を学ぶときは、「苦痛にしないこと」が大切です。「イザとなったら身振り手振りでOK!」と気楽に考えて、言葉を通じて新しいことを知ったり、人とのコミュニケーションを楽しんだりしていきたいですね。
ガーディアンの記者も、日本語のオノマトペをすべて覚えようとすると「fura fura(フラフラ)になるよ」と、勧めていませんでした。(井津川倫子)