夫婦が共に家事育児の主体となって『一億総しゅふ化』すれば、性別役割分業はなくなるはずです。
そもそも、女性は管理職になりたがらないという声もあります。
たしかに、私が研究顧問を務める「しゅふJOB総研」が、2022年に主婦層を中心とする就労志向の女性に行った調査では管理職を「希望する」と答えた人は26.5%しかいませんでした。
しかしながら、同じ人たちに質問を続けて、もし結婚や出産をしても家庭の制約がなく、100%仕事のために時間を使うことができるとしたら管理職を希望するか、と尋ねると、「希望する」が64.4%に跳ね上がりました。
これって、「男は仕事、女は家庭」という性別役割分業が、いまだ多くの家庭に根強く残っているから、女性が仕事するうえで制約を受けている、ということじゃないですか。
でも、いまや専業主婦は減少の一途を辿り、世のご家庭の3分の2以上が兼業主婦になっています。にもかかわらず、家庭から受けている制約は変わっていないということです。
つまり、仕事と家庭の両立で悩んでいるのは、いまも女性ばかりということになります。
自分自身が兼業主夫となって、実感としてわかったことがあります。それは、家事を「手伝って」いた時は、家事の全体像や本当の大変さが全くわかっていなかったということです。
サラリーマンとして20年以上にわたり、家計収入獲得のプレッシャーを感じながら、日々かなりのハードワークをこなしてきた自負がありました。ところが、兼業主夫となって1年目、しんどくて2度も寝込みました。家事の大変さは、休みもゴールもないマラソンのような感じです。
世の夫の多くが「名もなき家事」のことがイメージできないのも、家事や育児に主体となって取り組まず「手伝って」いるだけなので、全体像が見えていないからだと思います。
「男は仕事、女は家庭」という性別役割分業にメスを入れるには、男性も主体として家事や育児に取り組む必要があります。夫婦が共に家事育児の主体となって『一億総しゅふ化』すれば、性別役割分業はこの世から消えてなくなるはずです。
主体となって取り組めるように家事や育児を覚えるのって、とても大事な「リスキリング」だと思います。それなのに、ITやAIなどのリスキリングばかり注目されて、家事育児できるようになるためのリスキリングが話題にならないのって、やっぱりヘンじゃないですか?(川上敬太郎)