想像していたことですが、兼業主夫になって、ハッキリと実感したことがあります。それは、家事はしんどい、ということ。土日も休みはありません。GWやお盆などの連休は、ゆっくりできないどころか、むしろ繁忙期です。
2030年までに女性役員比率を30%以上にする政府目標、今度はうまくいくのでしょうか?
兼業主夫になって3か月ほど経ったある土曜日、突然体が動かなくなって寝込んでしまったことがあります。20年以上の会社勤めではかなりのハードワークをこなしてきたつもりですが、家事のしんどさは異質です。ゴールのないマラソンを延々と走り続けている感覚に似ています。
結局、兼業主夫の一年目はペースがつかめず、その半年後にも同じように一日寝込みました。
そして、あらためてわかったこと。それは、子どもが小さかったころの育児の大変さは、この比ではなかっただろうということです。私が兼業主夫になった時、下の子たちはもう中学生。思春期特有の難しさはあるものの、「服をかたづけて」と言えば、ちゃんと動いてくれます。
自分が管理職になったばかりのころ、仕事だけに集中できていたのは、妻が家事育児を引き受けてくれたおかげだという思いが、およそ20年の時を経てより強くなりました。
それもまた、主夫になったからこそ得られた学びだなぁ、などと感じつつ次男のお弁当をつくり終えたある朝、一息つきながら新聞を広げると、政府が示す女性版骨太方針の原案なるものが大きく報じられていました。
なんでも、2030年までに、東証プライムに上場する企業の女性役員比率を30%以上にするとか。目標を掲げることはいいと思うのですが、もともと2020年までに女性管理職比率を30%にしようとしていた期限を2030年に延ばしたばかりだけに、上手くいくのか気がかりです。
ただ、世の中で働いている人の数は男性と女性とで大きな差はありません。正社員だけで比較しても女性の比率は30%を超えていますから、その比率のまま昇進していけば、女性管理職比率は自然と30%を超えるはずです。
管理職になると仕事がハードに、そこに家事育児も加わって...両立なんて無理ゲーでは。
しかしながら、内閣府の男女共同参画白書によると、2021年の女性管理職比率は、課長級で12.4%に留まります。となると、管理職になりづらい女性特有の何らかの理由がありそうです。
よく指摘されるのが、機会の不平等です。男性は最初から管理職候補として育てられ、負荷はかかるものの成長機会にもなる仕事が与えられやすかったり、臨時のプロジェクトなどが発生した時も、リーダー的なポジションを任されやすかったりします。
得てしてその背景には、「女性は結婚・出産を機に戦力として見なせなくなる」という決めつけがあります。
また、女性は管理職に向かないという指摘も耳にします。しかし、政治家や起業家など、リーダーとして活躍している女性の事例は、枚挙に暇がありません。個人的に向き不向きはあるでしょうが、女性であることが管理職に向かない理由にはならないことを、数多の女性リーダーたちが実績で証明しています。
逆に、管理職に向かない男性の事例も枚挙に暇がありませんし...。
そして、さらによく耳にする理由がもう一つ。女性は管理職になりたがらない、という指摘です。もちろん、管理職になりたいと思わない女性はたくさんいると思います。しかし、同じように、男性の中にも管理職になりたがらない人はたくさんいます。
ただ、管理職になりたがらない人は女性の方が多いとしたら、一つ思い当たる理由があります。それは、家事や育児の負担です。主夫になって1年経たないうちに2度も寝込んだからこそ、身につまされてそのしんどさがわかります。さらに、子どもが小さいころなら、なおさらです。
管理職になれば、仕事はさらにハードになるかもしれない。そこに、結婚や出産で家事育児も加わるなんて無理ゲーです。
しかし、男性にはそんな悩みがありません。管理職につながる道を同じように歩いていたとき、女性の行く手にだけ「家事育児と仕事との両立」という急な上り坂が見えているとしたら、当然ながら迂回する人が多くなります。
なかには、急な上り坂などものともせずガンガン登り切ってしまう女性もいますが、それはその女性がスゴイのであって、女性の行く手にだけ急な上り坂が見えていていい理由にはなりません。
「何を言ってるんだ! 家事育児をこなしながら見事に管理職を務めている女性がいるんだから、やってやれないことはない。ようは、やる気がないだけだ」
もし、そんなことを言う男性管理職がいるのなら、とても立派です! ぜひ、自ら家事育児を一手に引き受けてください。やってやれないことはないはずですし、ようはやる気の問題ですから。(川上敬太郎)