とどまるところを知らない物価高。家計のやりくりが厳しくなっているところに、実に25年ぶりという缶コーヒーの値上げが襲いました。
さらには、6月以降の値上げが決まっている食品が5500品目以上という報道もあります。まだまだ続く物価上昇気配には、正直ウンザリです...。
そんな中で行われたメーデー。岸田首相が労働組合の大会に出席し、「賃上げの機運を盛り上げたい」と演説したとか。今年の施政方針演説でも構造的な賃上げを掲げていたし、ぜひとも物価高を上回る賃上げを期待したいところです。
雇用者全体では2.7%を占める派遣社員...ここだけにフォーカスしていい話なのか?
とは言いながら、賃上げって、そう簡単にできることではありません。巷では、ヤレ〇%アップだ、インフレ手当だ、と景気の良い言葉を耳にしたりもします。でも、実施しているのは一部の超大手企業ばかり。これではかえって、中小・零細企業との賃金格差が開いてしまう気もします。
そんな悩ましい状況の中、「労働者派遣を違法に戻せば正社員の賃金が上がる」という著名人のツイートが話題になりました。物価高で苦しいだけに、それで賃金が上がるなら、ありがたいことです。
そういえば、かつて労働者派遣法の改正をめぐって紛糾していた時は「正社員がゼロになる!」なんて主張を聞いたこともありました。リーマンショックのころは年越し派遣村が連日報道されたり、ワーキングプアの温床と言われたり、労働まわりの不具合は、なにかとこれまで「派遣が悪い!」でおさめられてきた感があります。
それが事実なら、まさに諸悪の根源。労働者派遣など違法に戻せばいいと思いますが、労働者派遣の影響力って、ホントに諸悪の根源と言えるほど大きいものなのでしょうか。
労働力調査によると、2023年3月の派遣社員の数は163万人。これは鹿児島県の人口に匹敵する数ですが、正社員の数を見てみると、それを遥かに上回る3591万人。派遣社員の20倍以上もいるではないですか! 正社員がゼロになる、という主張は一体なんだったのでしょう?
雇用者全体に占める比率は、正社員59.5%に対し、派遣社員はたった2.7%です。
それだけのボリューム差を考えると、労働者派遣を違法にしたところで正社員の賃金が上がるほどの影響力があるとは思えません。それどころか、派遣社員が居なくなる分、正社員より賃金が低い他の非正規社員が増えることになるような気がします。
派遣社員以外の非正規社員がどれだけいるのか確認してみると、パート1031万人、アルバイト420万人、契約社員290万人など。派遣社員を含めると、非正規社員は2101万人にも及びます。正社員の半分を超える水準です。派遣社員はそのうちの7.8%に過ぎません。
それなのに、派遣社員にだけフォーカスするのって、ヘンではないですか。