「お客様は神様ではありません」...カスハラへの抗議で本当に言いたかったことって?【vol.24】(川上敬太郎)

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カスハラした時点で、すでに「お客様」ではないのでは...よく考えてみると、ヘンな言葉です。

   ただ、お客様としてはカスハラなどするつもりはなく、希望をわかってほしかっただけという場合もたしかにあります。また、他人には些細なことだと感じられても、本人にとってはとても重大だったのかもしれませんし、非があるかどうかという理屈ではなく、不満を抱いた感情に寄り添ってほしかったのかもしれません。

   それなのにひたすら正論をぶつけられたら、「求めているのはそういうことじゃない!」と感情的になってしまうこともありそうです。お客様も、人間ですから。

   一方、理不尽に見える要求にグッと耐えて解決策を見出そうと努める中で、新たな気づきが得られることもあったりします。それはそれで、とてもありがたいことです。そんな気づきを与えてくれる存在であることを考えると、やっぱりお客様は神様なのかもしれません...。

   などと頭の中で、堂々巡りを続けていると、勇気あるバス会社さんがさらに酷いカスハラも受けていた、という追加情報が入ってきました。なんでも、その会社が運営しているタクシーを利用した客が、料金を払えないと怒鳴って杖を振り回したりしたのだとか。

   それって暴力じゃないですか。もし社員がケガでもしたら大変です。さらに驚いたことに、結局、その客は料金を支払わず、会社は泣き寝入りすることになったそうな。サービスは利用しておいて暴力を振るい、挙句の果てに代金を払わないとなると、もう強盗と大差ありません。

「"お客様"がこんなカスハラをするなんて、やっぱり神様なんかじゃないよな」

と独り言ちた時、スッキリしない妙な違和感を覚えました。何が引っかかるのか...考えるうちに気づいたのは、前提の間違い。

   社員を傷つけたり、強盗まがいのことをしたり。そんな狼藉を働く輩など、そもそも"お客様"じゃないのです。となると、カスハラって言葉自体が、根本的に矛盾しています。

   だって、カスハラした時点で、すでに"お客様"ではないのですから。よく考えてみると、ヘンな言葉です。

   「お客様は神様ではありません」という抗議文も、本当は客でもない狼藉者に対して、「あなたはお客様などではありません」と言いたかったんじゃないでしょうか。(川上敬太郎)

川上 敬太郎(かわかみ・けいたろう)
川上 敬太郎(かわかみ・けいたろう)
ワークスタイル研究家
男女の双子を含む、2男2女4児の父で兼業主夫。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者を経て転職。業界専門誌「月刊人材ビジネス」営業推進部部長兼編集委員、広報・マーケティング・経営企画・人事部門等の役員・管理職、調査機関「しゅふJOB総合研究所」所長、厚生労働省委託事業検討会委員等を務める。
雇用労働分野に20年以上携わり、仕事と家庭の両立を希望する「働く主婦・主夫層」の声延べ4万人以上を調査・分析したレポートは200本を超える。
NHK「あさイチ」、テレビ朝日「ビートたけしのTVタックル」などメディアへの出演、寄稿、コメント多数。
現在は、「人材サービスの公益的発展を考える会」主宰、「ヒトラボ」編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構株式会社 非常勤監査役、JCAST会社ウォッチ解説者の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等の活動に従事。日本労務学会員。
1973年生まれ。三重県出身。
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