気がつけば、もう年の瀬。スーパーの入り口周りには、色とりどりのしめ縄が並ぶ季節となりました。あっという間に過ぎつつある一年ですが、今年も「なんかヘンだな?」と思う会社まわりのトピックがたくさんありました。
そこで、当コラム『ここがヘンだよ会社の常識』にて、2022年に取り上げた話題を振り返り、印象的だった5つを選出して、最も教訓とすべき話題に『教訓トピック大賞2022』を贈りたいと思います。
見落とされている週休0日の仕事にも議論を
まずは、名だたる会社が導入を進めているという週休3日制。働き手にとって休みが増えることはありがたいことです。海外で行われた実験では、週休3日制にしても生産性は下がらず、幸福感は上がったとする報告もあるとか。
その一方で、見落とされている週休0日の仕事があります。
それは、家事や育児。
多くの会社では週休2日が導入されていて、それを3日にするとか議論されています。なのに、365日週休0日で家事育児に勤しむ主婦たちの休みについての議論が進まないのってヘンです。思えば、この時期、年末年始なんて、主婦にとっては繁忙期でしかありませんね。
◆多様な働き方へ...「週休3日制」検討企業相次ぐ なのに、身近な「週休0日」の仕事改革がスルーされてしまうのはナゼ?【vol.11】(川上敬太郎)
ノミネート2つ目は、大手回転ずしチェーン店で起きたライバル会社の機密情報持ち出し。回転ずしチェーン店を巡っては、他にもパワハラやおとり広告など不祥事が続きました。 会社の業績を上げようと頑張った結果なのかもしれませんが、やってることがヘンです。不正をはたらいた結果、競争には負け、回転ずしを食べることを楽しみにしている子どもたちもガッカリさせてしまいます。
◆「会社のために不正を働く」人って、最も肝心なことを見落としてませんか?【vol.17】(川上敬太郎)
ガッカリといえば思い出すトピックが、ノミネートの3つ目のこの話題。表彰の際に「あーあって感じ」と、普通はガッカリした時に使う言葉が書かれた賞状ならぬ「症状」を渡すなどのパワハラで、社員が自ら命を絶つほどに追い込んでしまった住宅メーカー。かなりヘンな「ノリ」のある職場だったようですが、苦しんでいる社員に目もくれない姿勢は最悪の事態を招いてしまいました。
◆度を超える言動、無自覚で社員を追い込むことも...職場のノリってそんなに大切なんでしょうか?【vol.14】(川上敬太郎)
インパクトある言葉に酔い、溺れてしまわぬように
ノミネートの4つ目は、最初聞いた時一瞬耳を疑った言葉、生娘シャブ漬け戦略。牛丼チェーン店の元役員が大学の社会人向けマーケティング講座の中で発してしまいました。
考え抜いた企画に上手くハマると、顧客は虜になってしまいます。それはマーケティングの醍醐味でもあるでしょうし、そんなエッジの効いた戦略を立てることの重要性を伝えるための例えとして用いた言葉なのだとは思いますが...しかし、あまりに不適切です。
そもそもシャブ漬けなんて、顧客が覚せい剤中毒になってしまうではないですか。顧客を不幸にするゴールをイメージしている時点で根本的な考え方がヘンです。ただ、インパクトがある言葉に酔ってしまうと、それがヘンであることに気づかないほど、マヒしてしまうということかもしれません。
◆「生娘シャブづけ戦略」の過ちって、新卒採用で陥りがちな過ちと似たトコないですか?【vol.12】(川上敬太郎)
そして、最後のノミネートは、まだまだ摘発が増えそうな雇用調整助成金の詐取。なかには、ン千万円とか、ン億円に及ぶ規模のものもあります。
詐取した経営者たちはさまざまな修羅場をくぐって、売上・利益を積み重ねてきたはずなのに、補助金に目がくらみ、これまで積み上げてきた経験を無駄にしてしまいました。その経験こそ、いくらお金を積んでも買えない貴重な財産なのに...。
◆雇用調整助成金の詐取と、経営者の知恵って、紙一重なのでしょうか?【vol.18】(川上敬太郎)
以上で、5トピックが出そろいました。こうしてみてみると、どれもこれも、残念なトピックばかりです。それは裏を返すと、どれも貴重な教訓ばかりということでもあります。
さて、『教訓トピック大賞2022』ですが――。
金額規模が大きく、今もまだ摘発が続いていて、さらに被害金額が広がりそうなことなどから、「雇用調整助成金の詐取」に贈りましょう。
厚生労働省の調査では、9月末までに不正受給額が135億円余りに達したとか。これって、そのまま、貴重な経験を無駄にしてしまった経営者たちの目をくらませた金額の総和なんですよね。今後、金額が増えるほど、より重い教訓となっていきます。
当コラムでは取り上げていないものの、保育園や障害者支援施設での虐待、自衛隊で起きたセクハラなど、ヘンの一言ではとても済ますことのできない、酷いトピックがほかにもたくさんありました。どれも二度と起きてほしくないものばかりです。
来年は、これらのトピックが教訓として活かされた年となりますように。(川上敬太郎)