インパクトある言葉に酔い、溺れてしまわぬように
ノミネートの4つ目は、最初聞いた時一瞬耳を疑った言葉、生娘シャブ漬け戦略。牛丼チェーン店の元役員が大学の社会人向けマーケティング講座の中で発してしまいました。
考え抜いた企画に上手くハマると、顧客は虜になってしまいます。それはマーケティングの醍醐味でもあるでしょうし、そんなエッジの効いた戦略を立てることの重要性を伝えるための例えとして用いた言葉なのだとは思いますが...しかし、あまりに不適切です。
そもそもシャブ漬けなんて、顧客が覚せい剤中毒になってしまうではないですか。顧客を不幸にするゴールをイメージしている時点で根本的な考え方がヘンです。ただ、インパクトがある言葉に酔ってしまうと、それがヘンであることに気づかないほど、マヒしてしまうということかもしれません。
◆「生娘シャブづけ戦略」の過ちって、新卒採用で陥りがちな過ちと似たトコないですか?【vol.12】(川上敬太郎)
そして、最後のノミネートは、まだまだ摘発が増えそうな雇用調整助成金の詐取。なかには、ン千万円とか、ン億円に及ぶ規模のものもあります。
詐取した経営者たちはさまざまな修羅場をくぐって、売上・利益を積み重ねてきたはずなのに、補助金に目がくらみ、これまで積み上げてきた経験を無駄にしてしまいました。その経験こそ、いくらお金を積んでも買えない貴重な財産なのに...。
◆雇用調整助成金の詐取と、経営者の知恵って、紙一重なのでしょうか?【vol.18】(川上敬太郎)
以上で、5トピックが出そろいました。こうしてみてみると、どれもこれも、残念なトピックばかりです。それは裏を返すと、どれも貴重な教訓ばかりということでもあります。
さて、『教訓トピック大賞2022』ですが――。
金額規模が大きく、今もまだ摘発が続いていて、さらに被害金額が広がりそうなことなどから、「雇用調整助成金の詐取」に贈りましょう。
厚生労働省の調査では、9月末までに不正受給額が135億円余りに達したとか。これって、そのまま、貴重な経験を無駄にしてしまった経営者たちの目をくらませた金額の総和なんですよね。今後、金額が増えるほど、より重い教訓となっていきます。
当コラムでは取り上げていないものの、保育園や障害者支援施設での虐待、自衛隊で起きたセクハラなど、ヘンの一言ではとても済ますことのできない、酷いトピックがほかにもたくさんありました。どれも二度と起きてほしくないものばかりです。
来年は、これらのトピックが教訓として活かされた年となりますように。(川上敬太郎)