替え玉ジュケン――?! 受験生を抱える親としては、思わず反応してしまう言葉です。しかし、ニュースで見たその言葉をよくよく確認してみると、ジュケンのケンの字が違いました。
就職活動する学生さんの適性診断テストで、「替え玉受『検』」が発覚したのだとか。
就活は大変です。それまで自由気ままに青春を謳歌していたのに、突然目の前に出現する壁。なにをどう進めていいかわからない中で、学生さんは就職先を見つけなければなりません。
替え玉を使って適性診断をパスできても、それだけで内定獲得はできません。
そこにやってきたコロナ禍。誰もがとまどう中で、オンライン化の波は世界中に広がり、学生さんたちの就活にもおよびました。そして、あちこちの会社で行われるようになったオンライン適性診断テスト。
まずはそれをパスしなければ先には進めない、というプレッシャーはあったと思います。しかし、オンラインだからバレないはず...と、替え玉受検を依頼するのはいただけません。
なぜか? もちろん、犯罪だからです。ただ、それだけではありません。そもそも、就活で替え玉を依頼したところで、デメリットしかないんです。
仮に、替え玉を使って適性診断をパスできても、それだけで内定獲得はできません。
面接などで落ちてしまえば、依頼料はムダになります。でも、もっと問題なのは、一生のキャリアを考えた時に、替え玉受検を依頼して入社に成功した「あなた」を待ち構える、その後のデメリットです。
適性がない会社に入社して、適性がない仕事に配属されてしまうかもしれません。
大きく3つ挙げます。まず1つ目。あなたは適性診断テストを自分で受けないわけですから、適性がない会社に入社して、適性がない仕事に配属されてしまう可能性があります。自分が入りたい会社や就きたい仕事が、自分に合っているとは限らないのです。
ただでさえ毎日しんどい思いをして仕事することになるのに、職場環境に合わず、その仕事に適性がないとしたら、入社後のストレスは半端ではありません。ずっと働き続けるなんて、地獄です。やがて耐えられなくなり、再び就職活動をしなければならなくなった時、かつて替え玉受検に依存して入社したあなたは、果たして自信を持って就活できるでしょうか?
次に、あなたは入社後もずっと、ビクビクしながら過ごさなければなりません。何年経とうが、替え玉受検が会社にバレてしまえば、解雇を含めてさまざまなペナルティが想定されます。替え玉受検したという事実も、一生ついて回ります。社会に出る前のほんの出来心だったとしても、キャリアの傷として残り続けてしまうのです。
デメリットの3点目は、替え玉を使って内定を得た後、あなた自身がその会社に所属すること。替え玉受検で入社できたら、あなたとしては、してやったりです。内定を得た直後は、「替え玉受検も見抜けないなんて、マヌケな会社だ」とほくそ笑むかもしれません。しかし、今度はあなた自身が、その愚弄した会社を支える社員になるのです。
ひょっとすると、あなたが上手くやれたのですから、その会社にはあなたのように不正入社した社員が他にもいるかもしれません。もし、あなたが入社した会社がその後も同じことを繰り返せば、類が友を呼び、やがて不正入社した社員だらけの会社になってしまうことでしょう。そんな会社が、果たして他社との競争を勝ち抜けるでしょうか?
信じて採用した会社は大いに迷惑です。そして、自分だけでなく、周囲の人たちまで不幸に。
そしてもっと怖いのは、あなたが不正入社という「成功体験」に味を占めてしまうことです。すると、入社後もさまざまな不正を繰り返し、ダークサイドへと落ちていくことになるでしょう。嘘の勤務報告、業績評価のごまかし、失態のもみ消し...。
「いやいや、不正は就活の時だけ。入社後は真っ当に仕事するから」
なんて言い訳をしても、その言葉がまったく信用ならないことは、あなた自身が一番よくわかっているのではないでしょうか。
後悔してからでは、遅いのです。
また、デメリットはあなただけに生じるわけではありません。まず、あなたを信じて採用した会社は大いに迷惑です。替え玉受検が発覚すれば、採用担当者は処分されるかもしれません。さらに、あなたの家族や母校の後輩たちなどにも迷惑がかかります。ほんの出来心が、自分だけでなく、周囲の人たちまで不幸にしてしまうのです。
そんなリスクを負ってまで、あなたは就活で替え玉受検を依頼したいですか?(川上敬太郎)