「コンプライアンスを推進します!」...会社がわざわざ宣言するのって、ヘンじゃないですか?【vol.16】(川上敬太郎)

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   ニュースを見ていると、会社による不祥事が絶えません。次から次に不正行為が報じられていたある一社のホームページをのぞいたところ、ハッキリと「コンプライアンスは重要な経営課題」と書かれていて少し驚きました。

   他にもニュースで不祥事が取り上げられた会社のホームページをみると、「推進します」とか「徹底します」などと、各社コンプライアンスの重要性をうたっているではないですか。

   コンプライアンスは法令遵守などと訳されますが、法令に限らず、倫理とか社会的規範だとか社会のルール全般を守ることを意味するもの。「たしかに、コンプライアンスって、重要だよなあ」と独りごちた時、ふと頭の中に浮かんできたのは、先日息子と交わした何気ない会話でした。

  • コンプライアンスについて、考える(写真はイメージ)
    コンプライアンスについて、考える(写真はイメージ)
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よく考えたら「校則守るって当たり前のことだから、エライって言うのも...」

   中学校に通う次男が「お願いがあるんだけど」というので、「どうした?」と尋ねると、前髪を切ってほしいとのこと。どれくらいの長さにするのか目安を確認すると、「眉毛の上まで」と言われました。たしかに、眉毛より少し長くなっていますが、うっとうしいというほどでもありません。

父:「前髪を切るのは構わないけど、今くらいがちょうどカッコイイんじゃないかい?」
次男:「いや、でもダメなんだよ」
父:「なんで?」
次男:「なんでって、前髪は眉毛の上までって、校則で決まってるからだよ」
父:「へー、ちゃんと校則守ってエライな」

   と言いつつも何かモヤモヤしたものが残ったので、前髪をチョキチョキ切りながら、今しがた次男と交わした会話を反芻してみて気づきました。

「校則守るって当たり前のことだから、エライって言うのもなんかヘンだよな」

   中学生にとって校則は「法律」です。それでも相手は子どもですから、思わず「エライな」という言葉が出てきましたが...もしも相手が大人なら、「ちゃんと法律守ってエライですね」などと言うはずがありません。

   そう考えると、コンプライアンスが重要だとか推進するとか、会社がわざわざ方針として掲げるのって、何かヘンじゃないですか? 子どもたちでも、当たり前にやってますよ。コンプライアンス。

   わざわざコンプライアンス推進を宣言する会社が多いということは、それだけコンプライアンスを守らない会社が世の中に多いことの裏返しなのでしょう。

コンプライアンスを守るための組織を作り、大々的にアピールしていたのに?!

   でも、それは致し方ないことなのかもしれません。そもそも会社って、利益を上げるための装置です。常に売上や利益をいかに増やすかを考え、実行に移していきます。会社の中で評価されるのは、利益を増やすことに貢献した人です。

   会社には、法律に触れたり、社会的規範に沿わないようなことであっても、それで利益が増えるのであれば、よしとされてしまう文化がどうしても生まれやすい宿命的な構造があります。

   たくさんの利益を上げれば優良な会社だと評価されますが、その利益が生み出されるプロセスの健全性までは、なかなか外部からは見えませんから。

   だから、「わが社はコンプライアンスを推進します!」なんて当たり前のことを宣言しなければ、コンプライアンスを軽視して利益第一で商売している会社との違いが示せないということなのだと思います。

   そんなことを考えながらニュースを見ていたら、またまた会社の不祥事のことを報じているではないですか。今度は、東京オリンピック・パラリンピックをめぐって賄賂が渡された疑いがあるのだとか。

   そこに名前が挙がってくる会社も、ことごとくコンプライアンス推進をうたっています。

   それどころか、わざわざコンプライアンスを守るための組織を作り、体制図まで掲げたりして大々的にアピールしているではないですか。こうなるともう、「コンプライアンス推進詐欺」では...?

   もちろん、ほとんどの会社は言葉の通りコンプライアンスを推進しているはずですが、わざわざ宣言しないといけない世の中ってどうなんでしょう?

   ある日突然、「私は法律守りますよ」などと言い出す人がいたら、「何かやましいことでもあるのかな」とかえって怪しく感じてしまうというものです。

   世の中に、コンプライアンス推進をアピールしないといけない風潮があるうちは、会社の不祥事ってなくならないんだろうなって思います。

(川上敬太郎)

川上 敬太郎(かわかみ・けいたろう)
川上 敬太郎(かわかみ・けいたろう)
ワークスタイル研究家
男女の双子を含む、2男2女4児の父で兼業主夫。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者を経て転職。業界専門誌「月刊人材ビジネス」営業推進部部長兼編集委員、広報・マーケティング・経営企画・人事部門等の役員・管理職、調査機関「しゅふJOB総合研究所」所長、厚生労働省委託事業検討会委員等を務める。
雇用労働分野に20年以上携わり、仕事と家庭の両立を希望する「働く主婦・主夫層」の声延べ4万人以上を調査・分析したレポートは200本を超える。
NHK「あさイチ」、テレビ朝日「ビートたけしのTVタックル」などメディアへの出演、寄稿、コメント多数。
現在は、「人材サービスの公益的発展を考える会」主宰、「ヒトラボ」編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構株式会社 非常勤監査役、JCAST会社ウォッチ解説者の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等の活動に従事。日本労務学会員。
1973年生まれ。三重県出身。
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