先生が心にゆとりをもって働けるように! 業務量多い保育士の「働く環境」、どう変えたのか?/社会福祉法人風の森「Picoナーサリ保育園」野上美希さん、野上巌さん

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働き方改革のメリット...離職率の低下&保育の「質」に好影響

―― 一方で、保育士から「働き続けたい」と思ってもらえるように、ブランド力の向上に取り組んでいるそうですね。

美希さん「(Picoナーサリ保育園と連携する)久我山幼稚園や保育園にあこがれて来てくれる先生を増やして、来てくれた先生にいかに誇りをもって働いてもらうか、という点で取り組みをしています。たとえば、テレビの取材やラジオの出演などの広報活動に、現場の先生たちに出てもらったりしています。園をPRするとなると、自ずとよいところを探しますから、それが、自分が働く園のよさを再認識することにもつながると思うんです」
巌さん「それと、保育園の先生が着ている制服は、デザイナーと先生たちが話し合いながら一緒にデザインしたものです。自分たちが関わった制服を着ると愛着がわくと思うんですよね。先生たちが主体的に組織を良くしていこうという気持ちがもてるように、現場主導の組織作りを重視しています」

――そうした取り組みを経て、保育士の働き方や意識は変わりましたか。

巌さん「はい。離職率は低下して育休復帰率も2年連続で100%になり、長く働ける環境だと思っていただけていると思います。現在、女性の保育士の割合が96%と、圧倒的に女性が多い職場です。女性が多いからこそ、育休から復帰してずっと時短で働くという先生ばかりになると園の運営も立ちいかないので、ご家庭の状況なども聞いてお互いカバーしながら働く意識が大切だと思っています」

――今後、さらに取り組んでいきたいことはなんですか。

巌さん「保育士の働き方改革を進めることで、保育の質にとてもよい影響があるということを私たちの園の経験から実感しています。働き方改革を進める園が増えることによって、潜在保育士が戻りたいと思ってもらえるような業界になっていく。そしてそれが、保育士不足の解消につながるという好循環が生まれるよう、業界や自治体への働きかけでは、私たちの事例などを伝えていきたいと思っています」
美希さん「保育士という仕事は、日本の未来を創る仕事だと思います。AIの発達によって、なくなっていく職業が増えるとも言われていますが、保育士はAIには代わることができません。子どもたちが『自分が自分であっていい』といった自己肯定感が最も育まれるのが乳幼児期と言われていますので、その乳幼児期に関わる先生たちの質は、何にも代えがたいものです。そこは業界だけでなく、自治体や国全体で取り組んでいくべきだと思いますし、私たちも自分たちのノウハウを伝えるなど、できることをしていきたいと思います」

(聞き手:戸川明美)



【プロフィール】
野上 美希(のがみ・みき)

社会福祉法人風の森 統括/学校法人野上学園 主事

東北大学工学部卒。シンクタンク、人材企業を経て、2009年、第一子の妊娠を機に夫の実家が経営する久我山幼稚園の経営に参画。以降、子育てひろば、杉並区内に認可保育園の開園(6園)や学童の立ち上げに携わる。2児の母。

野上 巌(のがみ・いわお)
社会福祉法人風の森/学校法人野上学園 事務長

明治大学理工学部卒。新卒入社から外資系IT企業にて通信事業者や大手金融機関向けの法人営業の部門を中心に約18年間を過ごす。2017年に家業である幼稚園、保育園、学童の事業に加わり新規園の開園や人材育成計画の策定、ICT活用の推進などを行う。

水野 矩美加(みずの・くみか)
水野 矩美加(みずの・くみか)
アパレル、コンサルタント会社を経てキャリアデザインをはじめとする人材教育に携わる。多くの研修を行う中で働き方、外見演出、話し方などの自己表現方法がコミュニケーションに与える影響に関心を持ち探求。2017年から、ライター活動もスタート。個人のキャリア、女性活躍、ダイバーシティに関わる内容をテーマに扱っている。
戸川 明美(とがわ・あけみ)
戸川 明美(とがわ・あけみ)
10数年の金融機関OLの経験を経て、2015年からフリーライター、翻訳業をスタート。企業への取材&ライティングを多く行う中で、女性活躍やダイバーシティの推進、働き方の取り組みに興味をもつ。
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