コロナ禍前からあったのに、ナゼ会社は「どこでもドア」をずっと使わなかったのでしょう?【vol.13】(川上敬太郎)

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   仕事終わりについつい飲み過ぎてしまうと、翌日の出社はかったるいものです。目覚まし時計を無視して寝続けた挙句、遅刻ギリギリで目覚めた時に思うこと。

「こんな時、『どこでもドア』があればなぁ...」

   しかし、そこに優しく微笑むドラえもんの姿はありません。もし「どこでもドア」があれば、ササっと着替えて身だしなみさえ整えればOK。ドアを開けて、「おはようございます!」とあいさつすると、そこはオフィスです。

  • こんな時、「どこでもドア」があればなぁ…
    こんな時、「どこでもドア」があればなぁ…
  • こんな時、「どこでもドア」があればなぁ…

そう、あのシステムを使えば生産性は爆上がり!

   そんな夢の世界を妄想しながら、「早く『どこでもドア』発明されないかな。22世紀はまだ先だな」と、これまで私を含む数多のビジネスパーソンたちが何度グチをこぼしてきたことか。

   ところがです。いつの間にかできていたではないですか、「どこでもドア」。

   朝ギリギリまで寝てササっと着替え、身だしなみを整えたらパソコンを立ち上げてネットにつなぎ、「おはようございます!」とあいさつすると、そこに同僚たちの姿が映し出されています。

   そう、Zoomなどのシステムを使ったWeb会議です。

   通勤時間はゼロ。朝起きてから勤務開始するまでのプロセスは、「どこでもドア」があればと妄想していた時と全く同じです。

   ところがこの「どこでもドア」、誰でも使えるわけではありません。日本生産性本部の調査によると、2022年4月のテレワーク実施率は2割にとどまるとか。

   「どこでもドア」を使えば、出勤時だけでなく、お客様先への瞬間移動も可能になります。たとえば、客先に訪問してから社内会議に参加する場合、14:00~17:00のスケジュールはこんな風に変わります。

<直接訪問の場合>
14:00~15:00 A社様にて商談
(15:00~16:00 帰社のため移動)
16:00~17:00 社内会議
<どこでもドア(Web会議)利用の場合>
14:00~14:55 A社様にて商談
(14:55~15:00 接続切り替え)
15:00~15:55 B社様にて商談
(15:55~16:00 接続切り替え)
16:00~17:00 社内会議

   移動時間のちょっとした寄り道を楽しめないのは残念ですが、その時間を別の商談に当てれば、生産性は爆上がりです。

   もちろん、コンビニ店員や介護職などエッセンシャルワーカーと呼ばれる方々の場合、Web会議で仕事はできません。

   でも、コロナ禍で緊急事態宣言が出てたころ、政府はテレワークを推奨して出勤者数を7割減らすよう要請していました。そう考えると、テレワーク実施率2割って少なすぎやしませんか。

   せっかくの「どこでもドア」も、使わなければ宝の持ち腐れ。もったいない限りです。

コロナ禍で変化した働き方、受け入れましょう!

Web会議、積極的に活用していきましょう!
Web会議、積極的に活用していきましょう!

   考えてみると、Web会議って、コロナ禍で新しく生まれた技術ではありません。Zoomの創業は2011年ですし、専用回線を使ったテレビ会議のシステムは、インターネットが普及するよりずっと前からありました。

   私が「『どこでもドア』があればなぁ」などと妄想していた時、実はすでに「どこでもドア」はできていたのです。

   会社はこんな便利な夢の道具をなぜ、ずっと使ってこなかったのでしょう?

   もし、コロナ禍前に戻ってお客様に、

「新商品のご案内をしたいのですが、Web会議でお時間いただいてもよろしいでしょうか?」

   などとお願いすれば、

「直接足を運ばないのか?なんだWeb会議って。失礼じゃないか!」

   と怒られてしまいそうですが、今から振り返ってみると、何がどう失礼なのかよくわかりません。

   海外では、テレワークは「働くフリ」と断じて話題になった経営者がいましたが、やはり根拠は不明確。見えてくるのは、なんとなくキライとか、なんとなくダメといった曖昧な抵抗感ばかりです。

   コロナ禍の発生により世界中がウイルス感染拡大防止に動き、Web会議は一気に広がりました。もしコロナ禍がなければ、いまだに曖昧な抵抗感が壁となって、Web会議は普及せず、「どこでもドア」はおあずけのままだったことでしょう。憎きコロナ禍ですが、そう考えると、なんとも複雑な気持ちになります。

   ...などと朝からボンヤリ考えていたら、微熱があると、次女が訴えてきました。いまのご時世、無理は禁物なので、学校を休ませないといけません。

   そうなると、同じ中学に通う双子の兄も休むのがルールです。兄の方はすこぶる元気ですし、せめてWeb会議で授業を受けさせたいなぁと思うのですが...子供たちが通う学校ではまだそこまでの体制は追いついてないようです。残念。

   せっかく便利な夢の道具が発明されても、使えないうちは結局、妄想を続けるしかないのです。

(川上敬太郎)

川上 敬太郎(かわかみ・けいたろう)
川上 敬太郎(かわかみ・けいたろう)
ワークスタイル研究家
男女の双子を含む、2男2女4児の父で兼業主夫。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者を経て転職。業界専門誌「月刊人材ビジネス」営業推進部部長兼編集委員、広報・マーケティング・経営企画・人事部門等の役員・管理職、調査機関「しゅふJOB総合研究所」所長、厚生労働省委託事業検討会委員等を務める。
雇用労働分野に20年以上携わり、仕事と家庭の両立を希望する「働く主婦・主夫層」の声延べ4万人以上を調査・分析したレポートは200本を超える。
NHK「あさイチ」、テレビ朝日「ビートたけしのTVタックル」などメディアへの出演、寄稿、コメント多数。
現在は、「人材サービスの公益的発展を考える会」主宰、「ヒトラボ」編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構株式会社 非常勤監査役、JCAST会社ウォッチ解説者の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等の活動に従事。日本労務学会員。
1973年生まれ。三重県出身。
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