最近よく耳にする「ジョブ型雇用」って、本当にそんなにいいものなのでしょうか?【vol.10】(川上敬太郎)

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従来型の「メンバーシップ型雇用」、意外といいのでは?

   「メンバーシップ型雇用」の特徴は、(1)職務内容が限定されていないこと、(2)職務ありきで人をあてがうのはなく、人の能力に合わせて職務をあてがうこと、(3)会社都合で配置転換できること、です。

   思いのほか、すばらしい制度ではないですか! 家庭内もメンバーシップ型にしてはどうでしょう?

   職務内容は限定されていないわけですから、夫にも率先して家事育児をしてもらいましょう。参加とか協力ではありません。夫が主体となって行うのです。あなたには、家事育児を行う能力が十分備わっています。

   なぜって?

   妻が作った料理に文句をつけ、あれをやれ、これをやれと指図するのは、自分もできるからですよね? だったら、自分でやればいいのです。まさか、能力もないのに妻の料理に文句をつけ、家のことを偉そうに指図しているわけじゃないですよね?

   そして、配置転換、いいですね。やりましょう。配置転換。これから家庭におけるあなたの職場はキッチンです。掃除も洗濯もおむつ替えも、よろしく頼みます。これまで妻がやってきたことを今度は夫がやるのです。ジョブローテーションってやつです。

   それにしても、こんなにすばらしい「メンバーシップ型雇用」をやめて、なぜ会社は「ジョブ型雇用」を目指すのでしょう。メンバーシップ型でいいじゃないですか。

   でも、そうか......。メンバーシップ型は、いまの職務が気に入っていても、会社の都合で強制的に替えられちゃう可能性もありますね。職務無限定で、能力が備わっている人にどんどん任せていくとなると、できる人は一気にパンクしてしまいそうです。うーむ......、融通が利きすぎるのも厄介ですね。そう考えていくと、ジョブ型がいいとかメンバーシップ型はダメだとか、一概には言えなさそうです。

   そもそも、世の中には料理が得意な人もいれば、子どもと一緒に貴重な時間を過ごしたいという人もいるわけです。そういう場合、勝手に家庭内ジョブローテーションなんかされたら、迷惑極まりないというもの。みんながみんな、働きたいわけでもなければ、家事育児がしたいわけでもありませんし。

   やっぱり大切なのはその人の意思ですね。人には意思があり、希望があるのです。家庭も会社も、いろんな人の意思や希望が絡み合って成り立っています。人の意思をないがしろにするのであれば、「ジョブ型雇用」だろうが、「メンバーシップ型雇用」だろうが、上手くいかないんですよ。きっと。

(川上敬太郎)

川上 敬太郎(かわかみ・けいたろう)
川上 敬太郎(かわかみ・けいたろう)
ワークスタイル研究家
男女の双子を含む、2男2女4児の父で兼業主夫。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者を経て転職。業界専門誌「月刊人材ビジネス」営業推進部部長兼編集委員、広報・マーケティング・経営企画・人事部門等の役員・管理職、調査機関「しゅふJOB総合研究所」所長、厚生労働省委託事業検討会委員等を務める。
雇用労働分野に20年以上携わり、仕事と家庭の両立を希望する「働く主婦・主夫層」の声延べ4万人以上を調査・分析したレポートは200本を超える。
NHK「あさイチ」、テレビ朝日「ビートたけしのTVタックル」などメディアへの出演、寄稿、コメント多数。
現在は、「人材サービスの公益的発展を考える会」主宰、「ヒトラボ」編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構株式会社 非常勤監査役、JCAST会社ウォッチ解説者の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等の活動に従事。日本労務学会員。
1973年生まれ。三重県出身。
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