従来型の「メンバーシップ型雇用」、意外といいのでは?
「メンバーシップ型雇用」の特徴は、(1)職務内容が限定されていないこと、(2)職務ありきで人をあてがうのはなく、人の能力に合わせて職務をあてがうこと、(3)会社都合で配置転換できること、です。
思いのほか、すばらしい制度ではないですか! 家庭内もメンバーシップ型にしてはどうでしょう?
職務内容は限定されていないわけですから、夫にも率先して家事育児をしてもらいましょう。参加とか協力ではありません。夫が主体となって行うのです。あなたには、家事育児を行う能力が十分備わっています。
なぜって?
妻が作った料理に文句をつけ、あれをやれ、これをやれと指図するのは、自分もできるからですよね? だったら、自分でやればいいのです。まさか、能力もないのに妻の料理に文句をつけ、家のことを偉そうに指図しているわけじゃないですよね?
そして、配置転換、いいですね。やりましょう。配置転換。これから家庭におけるあなたの職場はキッチンです。掃除も洗濯もおむつ替えも、よろしく頼みます。これまで妻がやってきたことを今度は夫がやるのです。ジョブローテーションってやつです。
それにしても、こんなにすばらしい「メンバーシップ型雇用」をやめて、なぜ会社は「ジョブ型雇用」を目指すのでしょう。メンバーシップ型でいいじゃないですか。
でも、そうか......。メンバーシップ型は、いまの職務が気に入っていても、会社の都合で強制的に替えられちゃう可能性もありますね。職務無限定で、能力が備わっている人にどんどん任せていくとなると、できる人は一気にパンクしてしまいそうです。うーむ......、融通が利きすぎるのも厄介ですね。そう考えていくと、ジョブ型がいいとかメンバーシップ型はダメだとか、一概には言えなさそうです。
そもそも、世の中には料理が得意な人もいれば、子どもと一緒に貴重な時間を過ごしたいという人もいるわけです。そういう場合、勝手に家庭内ジョブローテーションなんかされたら、迷惑極まりないというもの。みんながみんな、働きたいわけでもなければ、家事育児がしたいわけでもありませんし。
やっぱり大切なのはその人の意思ですね。人には意思があり、希望があるのです。家庭も会社も、いろんな人の意思や希望が絡み合って成り立っています。人の意思をないがしろにするのであれば、「ジョブ型雇用」だろうが、「メンバーシップ型雇用」だろうが、上手くいかないんですよ。きっと。
(川上敬太郎)