社員一人ひとりがD&Iを「自分事」にすることが大事
――総合化学メーカーというと、男性が多いイメージがあります。現在、社員数や管理職における女性の割合はどの程度でしょうか。また採用面での取り組みはいかがです?
久保田さん「三菱ケミカル単体では、全社員における女性の割合は15%弱となっています。技術職の割合が高いため、どうしても女性が少なくなっているのが現状です。また、管理職における女性の割合は、単体で4%となっています」
松本さん「本社(製造部門のオペレーター職除く)の採用活動においては、事業部門の女性の割合は比較的高く推移していますが、技術職の割合は微増にとどまっています。技術職には、化学、化学工学、機械・電気という3つの分野がありますが、こうした理系分野の採用における女性の割合は10%前後から20%となっています。
女性の技術職としてのキャリアについて認知を広めるために、就職説明会やキャリアセミナーなどで、女性社員がどのように活躍しているかを紹介したり、女性社員を交えた座談会を設けたりするなどの活動を行なっています。また、進路選択の際に理系分野でのキャリアをイメージできるように、中学・高校に技術職の女性社員が出向き講演するといった、より若年層へ向けた啓発活動もしています。『化学分野で、女性がキャリアをきちんと築いていける』ということは引き続き訴えていきたいですね」
――今後、課題や強化したい取り組みについて教えてください。
久保田さん「本社部門に限らず、製造部門においても、女性や高齢者ら、誰もが働きやすい職場環境を図るといった取り組みを行っていきます。具体的には、更衣室やお手洗いといった施設の一層の充実を図るために『爽快プロジェクト』とよばれるプロジェクトを推進しています。これからも、すべての社員が気持ちよく働けるような環境づくりを進めていきたいと思います」
松本さん「複数の会社が統合した会社なので、もともと、さまざまな考え方を受け入れる土壌があり、ダイバーシティ&インクルージョンの必要性も浸透しつつあります。一方でまだ、『会社や人事が進めるもの』とか『女性のこと』といった意識があると感じています。各職場や社員一人ひとりがダイバーシティ&インクルージョンを自分事としてとらえ、社員自身が参画し前進させていくような取り組みの強化が必要だと感じています。
ダイバーシティ&インクルージョンで目標としているのは、ジェンダーなどの属性の多様性だけでなく、一人ひとりの個性や内なる多様性が受容されて、活力やパフォーマンスを最大化することです。女性やLGBTQだけでなく、多様な国籍や年齢層、キャリアバックグラウンドなどの多様性を一層推進し、働きやすさを追求していきたいと思っています」
(聞き手:戸川明美)
プロフィール
松本 麻衣子(まつもと・まいこ)
三菱ケミカル株式会社 総務人事本部 人材組織開発部 部長
大学卒業後、ITベンチャー、ゲームメーカーを経て2019年に三菱ケミカルに入社し、採用グループマネジャーとして、新卒採用・キャリア採用を統括。2021年4月より現職。
久保田 祥(くぼた・しょう)
三菱ケミカル株式会社 労制人事部 チームリーダー
大学卒業後、2006年に入社。工場人事、給与、人事制度企画などを経験。2021年4月より現職。