人財サービスのパソナの「DNA」 「性別や役割のルールに男女の別はない」パソナグループの金澤真理さん、芝陽子さん、植木まり子さん

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   人材派遣事業からスタートした株式会社パソナグループは2017年、厚生労働省から女性活躍推進の優良企業として「えるぼし」の最上位クラスの認定を受けるなど、毎年女性活躍の上位にランキングされている。

   グループ会社の一つ、株式会社パソナ日本創生大学校が、企業の未来を切り拓く女性幹部候補を育成する合宿型プログラム「Women's Advanced Program」を、2021年10月4日から兵庫県淡路島で開始。他の企業への提案について、日本創生大学校 執行役員の植木まり子さんに、パソナグループの取り組みを同社 常務執行役員でHR本部長の金澤真理さんとグループ人財開発部長の芝陽子さんに聞いた。

  • 会社・組織をけん引する女性トップリーダー人財の育成を目指す「ワンダーウーマン研修」
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女性幹部育成の新プログラムをスタート

日本創生大学校 執行役員の植木まり子さん
日本創生大学校 執行役員の植木まり子さん

   ――このほどスタートした「女性幹部候補育成プログラム」とは、どのような意図で行われたものですかー

植木まり子さん「社会に新たな価値を創出する次世代の女性経営幹部候補の育成を目的にしています。1期は18社の企業から人選された方に、参加いただいてスタートしました。『志をもって未来を切り拓く』をテーマにしたプログラムになっています。この志というのは、企業の中でやらなければならないからとか、言われたから進めていく、ということではありません。新しい視点・働き方・考え方をもって、ゆるぎない確固たる想いで周囲を巻き込みながら仕事に挑戦していくことだと思っています。
世の中の課題は女性活躍の比率が低いことではないと思っています。比率が低いという前に想いを養う場が少ないのではないかと考え、合宿研修という場で想いを明確にし、切磋琢磨できるネットワークをつくり、新しい時代に求められる経営を学ぶことで、視野を広げ視座を高めていける内容にしました。企業の経営幹部に求められる『新規事業創出』をはじめ『SDGs』、『健康経営ウィルビーイング』など新しい視点を取り入れています。一番大事にしているのは、『体験から学ぶこと』です。今までの考えを一たん置いて、五感を解き放ち、問いをもつこと、そしてアウトプットしてもらうことで、自分自身をアップデートしてもらうようにしています。5日間の合宿を含む研修を3か月間行う中で、成長のサポートだけでなく価値観の違いや困難に出会った時の乗り越え方なども学んでいきます。プログラム修了後、1年間は、ネットワークづくり、ロールモデル、メンタリングなどのフォローアップと受講者を送り出した企業の人事担当者同士の交流会も行い、女性経営幹部の育成について考えていく内容です。日本企業における女性活躍推進の促進に少しでもつながればと思っています」

創業の想いは人事制度に受け継がれている

パソナグループ常務執行役員 HR本部長の金澤真理さん
パソナグループ常務執行役員 HR本部長の金澤真理さん

   ――パソナグループでの女性活躍も以前から取り組まれていますが、どのようなものがありますかー

金澤真理さん「当社は1976年に、創業者の南部靖之が、企業理念『社会の問題点を解決する』を掲げ、主婦の再就職を応援したいという想いから事業をスタートしています。当時、女性は一度家庭に入ると、経験やスキルを活かした仕事に就くことが難しい時代だったようです。子育てがひと段落した主婦の社会進出の場を提供するために、人材派遣事業をスタートしました。創業時の想いは今も変わらず事業活動や人事制度にも受け継がれており、社内において、性別による役割やルールの違いはありません。
当社の女性活躍の状況は、女性の占める割合は62.6%、全管理職に占める女性の割合は51.5%で、役員に占める女性の割合は31.4%となっております。女性社員の出産後の復職率は100%。出産・育児後、ライフステージが変わっても安心して戻ってこられる環境を拡充しています。
当社企業内保育園「パソナファミリー保育園」に子どもを預けて働くことができるのもその一つです。
また、産休・育休復帰後のサポートとして、2013年から実施する『IDOBATA会議』があります。役員やキャリアメンターとなるベテランママとの情報交換や棚卸を通じて、自律的なキャリア形成に繋げています。(『IDOBATA』には、Innovation「変革を起こす」 ・Do「行動する」 ・Balance「ソーシャル・ワーク・ライフバランスを実現する」 ・Talent「才能・能力を活かす」の意味が込められています)
同年2013年には、子供を持つ男性社員による『パパプロジェクト』が発足、育児・家事参加することで間接的に女性の活躍を後押しし、現在でも社内セミナーなどを通じた啓蒙活動を行っています。女性に限定しているわけではありませんが、『パソナファミリーケア・プログラム』では、介護で休みを取らなければならない社員に対して、当社グループ会社「パソナライフケア」のケアマネージャーによる相談窓口があり、介護情報の提供や家事代行サービスの提供など、会社全体で働く環境をサポートできるプログラムを用意しています」

   ――女性の管理職登用が多いことにですが、どのような施策がありますか。

芝陽子さん「女性活躍の観点では、2014年から実施してきた『ワンダーウーマン研修』があります。このプログラムは女性管理職が、さらなる高みを目指して『一歩前に踏み出す勇気』を持てるよう内容を組み立てています。ビジョンの描き方やリーダーシップをはじめ、キャリアの築き方について社内エグゼクティブから指導を受ける機会となっています。創業者の南部からも、どのような想いで事業を興してきたのか―トップリーダーとしての心構えを直接学びます。また、文化教養を磨くために一流の講師をお招きし、研鑽を積んでいます。これまでに、受講者の約7割が昇進・昇格し、経営に関わる役割に任用されている人も4分の1を占めるなど、多くの参加者がステップアップしています。
また、2014年開始した起業家育成プログラム『Ladies Be Ambitious』には、社員だけでなく社外の女性も参加されています。起業に関する実践的な講義をはじめ、事業リソース支援など、起業に向けて継続的にサポートする内容となっています」

「自分の未来は自分で創る」を大切にしたい

   ――ライフステージに合わせた取り組みも多いと聞いていますが、どのようなものがありますか。

金澤さん「男女問わず社員のみなさんが安心して活躍していただけるよう2015年に『ワーク ライフ ファシリテーター』を設置しました。専門資格と幅広い経験を持つメンバーが在籍し、仕事だけでなく、健康面や育児・介護などのさまざまな相談ができるようになっています。
この他にさまざまなヘルスケア講座も開催し、女性に多い病気やメンタルヘルスなどの内容についても発信しています」
グループ人財開発部長の芝陽子さん
グループ人財開発部長の芝陽子さん
芝さん「世代別では『キャリアディスカバリープログラム』を2016年からスタートしました。人生100年時代を迎え、50歳をキャリアの折り返し・節目と捉え、キャリア・健康・マネーの将来設計を考える研修とワークライフファシリテーターの面談がセットになったものです。今まで延べ620名が受講しています。受講者から大変好評のプログラムで、今年は受講対象者を広げ45歳も対象に実施予定です。将来を考えるなかで、キャリアチェンジを考える方に向けた、グループ会社でのインターンシップも企画しています。実際にセカンドキャリアで未経験から保育士になった方がおり、現在、当社の企業内保育所で保育士として活躍しています」

   -―子育てと仕事を両立してきて、今後はいかがですか。

金澤さん「私も現在、企業内保育園に子供を預けて仕事をしています。これから私自身も、ライフステージの変化に応じて働き方も変わっていくと思います。パソナグループが大切にしてきた考え方に『自分の未来は、自分が創る』というものがあります。一人ひとりが自律的に自分のキャリアを考えながら、いきいきと活躍できる場をさらにつくっていきたいですね」

プロフィール
金澤 真理(かなざわ・まり)
パソナグループ 常務執行役員 HR本部長
2001年4月に株式会社パソナに新卒入社。派遣部門の営業や、ライフソリューション事業を行うグループ会社の経営に従事。2020年6月から現職。パソナグループの人事・労務を統括し、社員一人ひとりがそれぞれのライフスタイルに合わせた働き方を実現できる採用活動や人事制度設計に取り組んでいる。5歳の女の子の母。

芝 陽子(しば・ようこ)
パソナグループ グループ人財開発部長
2004年4月に株式会社パソナに新卒入社。派遣部門の内勤営業を経験したのち、2009年6月から現職。パソナグループの選抜研修および昇格時研修を通じ、一人ひとりの夢やキャリアの実現に向けた支援に取り組んでいる。

植木 まり子(うえき・まりこ)
株式会社日本創生大学校 執行役員
1999年4月に株式会社パソナに新卒で入社。2009年からBPO事業に従事、2013年にパソナの執行役員となりBPO事業部責任者に。2021年1月からパソナグループで企業の女性幹部を育成するプロジェクトの立上げに従事。5歳の男の子の母。

水野 矩美加(みずの・くみか)
水野 矩美加(みずの・くみか)
アパレル、コンサルタント会社を経てキャリアデザインをはじめとする人材教育に携わる。多くの研修を行う中で働き方、外見演出、話し方などの自己表現方法がコミュニケーションに与える影響に関心を持ち探求。2017年から、ライター活動もスタート。個人のキャリア、女性活躍、ダイバーシティに関わる内容をテーマに扱っている。
戸川 明美(とがわ・あけみ)
戸川 明美(とがわ・あけみ)
10数年の金融機関OLの経験を経て、2015年からフリーライター、翻訳業をスタート。企業への取材&ライティングを多く行う中で、女性活躍やダイバーシティの推進、働き方の取り組みに興味をもつ。
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