「テレワーク推進」はどこいった? 入場制限されるほどの「痛勤」混雑のナゼ?【vol.6】(川上敬太郎)

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   まだ午前中なのに、高校に行ったはずの長女が「ただいまー」と帰ってきました。

   ついに不良になって学校をフケたのか?! と、おそるおそる理由を聞くと、

「駅で待ってたけど、電車来ないんだもん。学校にも確認して今日は公欠になった」

   前夜に首都圏を襲った地震の影響で、電車が大幅に遅れているとのこと。ネットニュースを確認してみると、駅のホームが人であふれかえっている様子が動画で流れているではないですか。入場制限した駅もあったとか。

   兼業主夫となり、料理だ、洗い物だ、と家事に追われる日々に疲れぎみでしたが、通勤混雑の風景や延々と行列をなす群れを見て、思わず「おつかれさまです」と独りごちました。

  • テレワークが進んだら、こんなことがなくなるはずじゃなかったの?
    テレワークが進んだら、こんなことがなくなるはずじゃなかったの?
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会社勤めのとき、通勤電車ではヒドイ目に遭った

   思えば会社勤めしていたころ、通勤をめぐって数えきれないほどヒドイ目にあってきました。

   乗車中に人身事故のアナウンスがあると、せつない気持ちになりながら、止まってしまったスシ詰め満員電車の中でジッと運転再開を待ち続ける。ようやく動き出したかと思ったら、今度は踏切故障のアナウンスが入り、再び止まるスシ詰め満員電車......。車両内には、自分と他の乗客が放つイライラオーラが、息苦しいほど充満しています。

   始業時間に間に合いそうになければ、各方面に連絡もしなければなりません。スシ詰めの中でカラダをよじりながらスマホを取り出し「電車遅延で遅れます」と会社にメール。どうしてもズラすことのできないアポイントがあった時などは、次の駅に停車した瞬間にダッシュで改札を出て、タクシーに飛び乗ったなんてこともありました。

   たまに、出たくない会議を公然と欠席できてラッキー! なんてこともありましたが、そんなご褒美よりも圧倒的に苦痛を味わうことのほうが多く、通勤にはロクな思い出がありません。止まった電車の中でお腹が痛くなりだした時など、まさに地獄の体験でした。

   そんなことを思い出していると、ふと疑問が浮かびました。

「あれ、世の中ではテレワークが推進されていたはずでは?」

   働き方改革や東京オリンピック開催中の通勤混雑対策など、国を挙げて推進されてきたはずのテレワーク。各省庁が協力してテレワーク推進フォーラムを立ち上げたのは2005年。毎年11月をテレワーク推進月間にするなど、盛んに啓発活動も行われてきました。

   さらに、新型コロナウイルスの感染拡大によって発出された緊急事態宣言。臨時休校なども行われ、大人たちは在宅勤務や時差出勤、子どもは自宅でオンライン授業という、未来社会のような光景が一気に広がりました。その時政府は、会社に出勤者数7割減を要請していたはず。

   なのに、ネットニュースで流れている通勤混雑風景を見る限り、何も変わってないではないですか?!

   無理して通勤なんかせずに、自宅や近所のワークスペースでテレワークしないのはなぜ? みんな通勤地獄に慣れきってしまっていて、ハーメルンの笛の音に吸い寄せられるかのごとく、駅に出向いてしまったのでしょうか。それならそれで、怖いことです。

テレワーク実施率、10月は22.7%に下がっていた!

公休扱いでうちに帰ってきた長女は自室で勉強をはじめた
公休扱いでうちに帰ってきた長女は自室で勉強をはじめた

   なかには、看護・介護職や接客業など、エッセンシャルワーカーと呼ばれるテレワーク不可の仕事に就いている人もいます。通勤混雑時には、エッセンシャルワーカーが優先的に電車を利用できるようにして、それ以外の職種の人は在宅勤務などに切り替えられるようにしておけば、社会活動が止まるリスクを最大限抑止できるはずなのですが。

   日本生産性本部の調査によると、2021年10月のテレワーク実施率は22.7%。最初の緊急事態宣言直後の前年5月は31.5%だったので、8.8ポイントも下がっています。駅のホームが人であふれかえるのも無理ありません。

「あれだけテレワークを声高に叫んでいても、結局何も変わってないのか」

   ため息交じりの父を尻目に、長女はさっさと自室に入り勉強を始めました。学校側も、授業を受けられなかった生徒へのフォローアップを考えてくれているとのこと。学校で授業を受けるのと同じとまではいかないまでも、勉強を止めないための工夫をできる限りしてくれているようです。

   さて、会社はどうでしょう。通勤しないと仕事が止まるという状況のまま、工夫できる余地があるのに、次の緊急事態宣言が発出されるまで放置、なんてことないですよね?(川上敬太郎)

川上 敬太郎(かわかみ・けいたろう)
川上 敬太郎(かわかみ・けいたろう)
ワークスタイル研究家
男女の双子を含む、2男2女4児の父で兼業主夫。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者を経て転職。業界専門誌「月刊人材ビジネス」営業推進部部長兼編集委員、広報・マーケティング・経営企画・人事部門等の役員・管理職、調査機関「しゅふJOB総合研究所」所長、厚生労働省委託事業検討会委員等を務める。
雇用労働分野に20年以上携わり、仕事と家庭の両立を希望する「働く主婦・主夫層」の声延べ4万人以上を調査・分析したレポートは200本を超える。
NHK「あさイチ」、テレビ朝日「ビートたけしのTVタックル」などメディアへの出演、寄稿、コメント多数。
現在は、「人材サービスの公益的発展を考える会」主宰、「ヒトラボ」編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構株式会社 非常勤監査役、JCAST会社ウォッチ解説者の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等の活動に従事。日本労務学会員。
1973年生まれ。三重県出身。
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