自らキャリアをデザインし、挑戦できる企業風土をつくる
―― 伝統ある大手メーカー企業で、主体性を重んじる社風はどのように創られてきたのでしょうか。
杉崎さん「一つには、2018年にカルチャー変革本部が立ち上がり、変革をリードする役員を外部から招聘したことがあります。このカルチャー変革の3つの柱である『人事制度改革』『コミュニケーション改革』『働き方改革』の推進が、社員の意識を変えるきっかけとなっています。
たとえば人事制度改革では、定期異動ではなく、自らがキャリアについて考え、希望して自由に異動できる制度ができました。私もこの制度を使った一人で、1995年の入社以来、SE職やマーケティング部門で働いてきましたが、産休・育休などを経て、2019年に自ら手を挙げて人事系の部門に異動しました。『働き方改革』ではテレワークはもちろんのこと、オフィスフロアのリノベーションや、各事業場にコワーキングスペースが完成しました」
―― マーケティング系から人事系部門のInclusion & Diversity担当という、大きなキャリア転換をされたのは、どのような経緯があったのでしょうか。
杉崎さん「2004年に一人目、2006年に二人目の子どもを出産し、併せて約4年間の産休・育休をとりました。復職後は、商品やサービスのマーケティングや販売促進、人材育成や新規事業企画なども担当しました。新規事業開発の人材育成を担当していた時に『同じ顔ぶれのようなメンバーばかりで話していてもイノベーションは生まれない』と実感することが何度かありました。『会社の成長には、もっと多様な人材が集まることが必要だ』と強く感じた経験でした。
もう一つは、私自身が、母として働く中で『無理せず仕事と家庭を両立して働けたらいい』、『両立には現在のポジションが限界だから、キャリアップはしなくていい』という『マミートラック』に、無意識のうちに乗りかかっていたことに気が付いたことがあります。その当時は課長クラスでしたが、自分の気持ちと向き合ったときに、『現状維持で本当に良いのか?』と思いを新たにしました。人事への異動という挑戦の背景には、『以前の私のような思いを、これからの若い世代にはさせたくない』と思ったことも大きかったですね」