目指したのは「教習所らしくない教習所。」 女性自身が意識変革を続けることで「変わる」 コヤマドライビングスクール 長井和子副社長

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女性活躍推進委員会が「現場」の声を吸い上げ

男性社会だった1986年、教習所に誕生した「レディースインストラクター」(撮影は2016年)
男性社会だった1986年、教習所に誕生した「レディースインストラクター」(撮影は2016年)

―― 現場の声や利用する側の視点が細かく反映されていることがわかります。そういった現場の意見や提案はどのように吸い上げられているのでしょうか。

長井さん「社内には、マナー向上委員会や広報企画委員会など20ほどの委員会やプロジェクトがありますが、その中の「女性活躍推進委員会」が、女性が働きやすい職場づくりを担っています。全5校から女性が1~2人ずつ委員として選出され、私はオブザーバーという立場でサポートしています。これまで導入された各種施策は、この女性活躍推進委員会メンバーが経営戦略会議(役員会議)でのプレゼンをして採用されたものがほとんどです。
そもそもこの組織は、2006年の全社合同忘年会の席で、女性社員が先代の社長に直訴して『子育て環境向上プロジェクト』が発足したのが始まりです。その後、「子育てしている女性ばかりじゃない」、ということで、『女性キャリアアッププロジェクト』と名前を変え、さらに「キャリアアップしたい女性だけじゃないよね」ということで現在の名前になりました。その過程の中で「プロジェクト」から「委員会」へと昇格しています。始まったきっかけも運営もボトムアップの組織だからこそ、社員や当事者に寄り添った制度が実現できているのではないでしょうか」

―― 不妊治療のサポート制度もあるそうですね。

長井さん「はい。2013年には、子づくり支援、すなわち不妊治療をサポートするための制度も導入しました。通院が必要なだけでなく、安静にしなくてはいけない時期があるなどといった個々の要望をシフトに考慮できるという制度です。こうした子供が生まれる前の制度から、産休・育休など生まれた後のさまざまな制度を委員会メンバーが手分けして冊子にまとめた『ABC BOOK(Amenity of Business & Child care Book)』を作成、社員に配布しています。制度だけではなく、利用する場合に必要な提出物などもカバーしており、これ1冊で出産や育児に関する制度が網羅され、とても分かりやすいと社員からも好評です」
これ一冊で子育て支援制度が丸わかりの「ABC BOOK」を手に
これ一冊で子育て支援制度が丸わかりの「ABC BOOK」を手に

―― 今後の課題はなんでしょうか。

長井さん「よく『これからどのような女性向けの施策を予定していますか?』と聞かれますが、『わかりません』と答えています(笑)。というのも、委員会のメンバーが考えた内容によって今後の施策が決まるので、フタを開けてみないと私にはわからないのです。
でも、ひとつ大きな課題として常にあるのは、女性の管理職を増やすということ。ここ数年で結婚や出産を機に辞めた女性社員はおらず、子育て支援策は功を奏していると思います。しかし、女性の管理職はいまだ少ない状態です。理由としては、勤続年数が長い女性がまだ少ないのと、当の女性が管理職になりたがらないからです。
「部下が残業しているのに(上司の)自分だけ早く帰るのは無責任なのでは」という理由で二の足を踏む人もいるのです。他にも女性が活躍するためには、まず女性自身の意識が変わらなければいけないことがたくさんあることを痛感しています。
今年3月に世界経済フォーラムが公表した『ジェンダー・ギャップ指数2021』では、日本が156か国中120位と最低レベルで、前回からも横ばいだったそうです。日本のジェンダーの平等がなかなか進まないことに、私自身、とても危機感を感じています。社会や育った環境によって女性自身が刷り込まれた考え方を変えることはとても難しいことですが、だからこそ女性の意識改革にねばり強く取り組んでいかなければと思っています」

(聞き手:戸川明美)


プロフィール

長井 和子(ながい・かずこ)
株式会社コヤマドライビングスクール取締役副社長
主婦からフリーランスコピーライターを経て、38歳で広告会社を設立。同年東京コピーライターズクラブ準新人賞、40歳で同新人賞を受賞。1989年女性の自立を応援するビジネススクール「アイムパーソナルカレッジ」を開校し、ライター、カウンセラーを輩出。その後飲食業界にも進出し『フォーブス日本版』で日本の女性企業家50人に選出された。 1985年からコヤマドライビングスクールに携わり、2010年9月から現職。

水野 矩美加(みずの・くみか)
水野 矩美加(みずの・くみか)
アパレル、コンサルタント会社を経てキャリアデザインをはじめとする人材教育に携わる。多くの研修を行う中で働き方、外見演出、話し方などの自己表現方法がコミュニケーションに与える影響に関心を持ち探求。2017年から、ライター活動もスタート。個人のキャリア、女性活躍、ダイバーシティに関わる内容をテーマに扱っている。
戸川 明美(とがわ・あけみ)
戸川 明美(とがわ・あけみ)
10数年の金融機関OLの経験を経て、2015年からフリーライター、翻訳業をスタート。企業への取材&ライティングを多く行う中で、女性活躍やダイバーシティの推進、働き方の取り組みに興味をもつ。
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