コロナ禍で、見込顧客(リード)の獲得やアポイントの獲得が難しくなったという会社が多いようです。
営業マンを対象にしたアンケートによると、困りごとの第1位は「リードが足りない」。2位が「アポが取れない」。3位は「既存の営業手法に限界を感じる」が、上位となっています(テレワークソリューションバンク「2021年の営業計画・営業見通しに関する調査」より。下図参照)。
また、Webサイトをみると、ある程度規模が大きくなり100人近くなる企業では、Webサイトが整備されているという会社も多いのでしょうが、中小・零細企業では、Webサイトをキレイにしても、すぐに売り上げが上がらないから、やりたくても「先送りしてしまう」という会社が非常に多いようです。
今回は中小企業のSEO(検索エンジン最適化)分野で10年以上の経験をもつメディコム株式会社の代表取締役 木村正晴(きむら・まさはる)さんに中小企業のSEOについて聞きました。
中小企業のホームページがリニューアルされないワケ
ホームページ強化をしたい会社は非常に多いです。実際に私も「ホームページを拝見しました!」というと、「そうなんですよ、でも本当はリニューアルしたくて」と答える経営者を数多くみてきました。
でも、中小企業の場合、Webサイトをリニューアルしても即効性がないからという理由で先送りになりやすいようです。しかし、今回コロナで在宅営業となった際、「メールマガジンを送らないと......」となって初めて、今のままのホームページではマズイ......となるようです。
◆ 大事なことはSEOやノウハウ提供の中身
まず、ホームページの「リニューアル=見た目をキレイする」と誤解している経営者が少なくないようです。見た目をキレイにするというのはもちろんですが、今はWebサイトが名刺代わりになっていますので、より詳細に専門性を訴求する必要があります。
――SEOの専門家の目からみて、なぜ今、ホームページを強化すべき、SEOを強化すべきなのか、ご意見をお聞かせください。
木村正晴さん「新型コロナウイルスの影響によりtoC、toBともにネット上から情報収集することが増えています。BtoBでは、飛び込み営業や電話営業でアポイントの獲得が難しくなっているため、別の手段を使う必要性があがっています。ほとんどのユーザーが検索から情報を探している今、ホームページ、もっといえばSEOの重要度は増しています」
――なるほど。さらにたくさんのWebサイトが乱立する中で、きちんとノウハウを持っている会社かどうか。顧客企業は厳しい目で見ているという側面もありますし、しっかりとノウハウがあるということを示すということは、営業上重要なことになりますね。
まず無料でできる対策はしてあるかどうか
――「これまでホームページ周りのことは何もしてこなかった」という中小・零細企業の経営者の中には、「お金がかかりそう」「面倒だ」という方もいます。まず、何から手を付ければいいですか。
木村さん「まず確認すべきは、『自社ドメインとサーバーを誰が管理しているか』です。『中小企業あるある』なのですが、自社ドメインとサーバーを誰が管理されているのか把握されていない企業が多いです。サイト改善を行う上で必須の情報ですので、まずはこちらから確認しましょう。
次に、『サイトがすでにあるけど何もしていない』という場合なら、無料で使えるサービスに登録し、利用されるのがオススメです。 『Googleアナリティクス』や『Google Search Console』だけでなく、『Googleマイビジネス』といったサービスも基本無料で提供されています。それらを使うことでサイトの改善や、特定キーワードで自社の情報を検索結果に出すことに繋がります。なお、これらのツールは連携して使うこともできるので、一つのGoogleアカウントに集約するようにしましょう」
――今、サービス業で苦境に立っている人の中には、無料ツールに触って、慣れることにもひと苦労という方も多いと思います。外部に相談するときにどんな情報あればスムースですか。
木村さん「SEOの観点でいえば、『メインの顧客像は誰か?』『競合と比べた際の優位性』ということになりますが、この二つがはっきりしているとサイトや狙うキーワードのズレに気がつきやすいです。 たとえば、こんな事例があります。大阪府内で4店舗を運営されている、高齢者向け商材の企業様の改善に入らせていただきました。社内で作成するお客様向け情報発信を、どのようなキーワードで作ればよいかわからないという課題をいただきましたので、顧客と競合優位性の整理という方向から支援しました。その結果、施策開始より4か月で月間ページビュー(PV)が430%、月間問い合わせ数が700%という結果になりました。まったく未着手でサイトを運営している会社では、テコ入れすることによって、短期間に流入を増やすことができることもあります」
◆ われわれの事業を知るための第一歩は、「顧客は誰か」という問いを発することである
「われわれの事業を知るための第一歩は、『顧客は誰か』という問いを発することである」との名言を残したのはP.Fドラッカーですが、ホームページのリニューアルでも、それは同じことのようです。
今後、ニューノーマルな経営スタイルが広がり、一部在宅、一部出勤の混合型組織は広がりそうですが、それにより非対面は常に一定層がいることになりそうです。サイトリニューアルは「いつかしないといけないもの」「すぐに売り上げが上がらないから先送りする」ものではなく、環境変化に備えてしっかりと考えを可能な範囲投資したいものだと思います。
中小・零細企業でWebがわからない経営者の方は、
「メインの顧客像は誰か?」
「競合と比べた際の優位性」
の、2点についてのみ、考えて相談すれば、外部支援を受けることができますので、ぜひこれを機会に準備、検討されることをオススメします。(高井信洋)
プロフィール
木村 正晴(きむら・まさはる)
メディコム株式会社 代表取締役
2009年よりSEO業務、Webメディア運営を開始。2016年にメディコム株式会社を創業。自社メディアで培ったサイト改善のノウハウを使ってクライアントのウェブ集客・成約率向上をサポート。不動産業界、人材業界Webメディアなど実績多数。