健康づくりは「投資」 中小企業向け「産業医選任サポート」で支援(アクサ生命 安渕聖司社長兼CEO)

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   【新連載】2021年3月、「健康経営」の優良法人認定が発表された。5回目となる今回は、大規模法人部門(上位法人に「ホワイト500」の冠を付与)に1795法人が、中小規模法人部門に7937法人(上位法人に「ブライト500」の冠を付与)が認定された(5月7日現在)という。

   そこで、2021年度の健康経営優良法人認定のエントリー締め切りの10月に向けて、連載企画「健康経営のススメ!」の第1弾として、これまでに認定を受けた企業などの事例を紹介。なかでもコロナ禍でのストレスに対して、産業医のアドバイスを有効に活用している企業にポイントとなる情報を教えてもらった。

    第1回は、全国の商工会議所などの商工団体、県・市などの自治体、全国健康保険協会(協会けんぽ)各支部などの保険者、産業医や保健師と連携して、地域の中小企業経営者向けに健康経営の導入・実践支援を進めているアクサ生命の社長兼CEO、安渕聖司さんに聞いた。

  • アクサ生命は、地域の中小企業経営者に向けて「健康経営」の導入・実践を支援している(写真は、アクサ生命の安渕聖司社長兼CEO)
    アクサ生命は、地域の中小企業経営者に向けて「健康経営」の導入・実践を支援している(写真は、アクサ生命の安渕聖司社長兼CEO)
  • アクサ生命は、地域の中小企業経営者に向けて「健康経営」の導入・実践を支援している(写真は、アクサ生命の安渕聖司社長兼CEO)

5年連続「ホワイト500」に認定

   アクサ生命は、安渕聖司社長兼CEO自らがチーフヘルスオフィサー(CHO=健康管理最高責任者)として自社の健康経営の取り組みに陣頭指揮を執り、経済産業省の「健康経営優良法人 ホワイト500」の認定を取得している。その経験談とともに、全国の中小企業経営者へのメッセージをもらった。

――コロナ禍にあって、従業員の健康面でどのようなことに気を配られていますか?

安渕聖司さん「新型コロナウイルス感染症という、いわば見えない脅威にさらされることで、我々の日常の活動が制限され、職場においても在宅勤務が主流になるという経験したことのない働き方に変わってきています。これらにより、新たなストレスがかかってきますので、まずは従業員の心のケア、メンタル面に注意をして、医療相談、安全対策や、より細かなコミュニケーションを含め、さまざまな対策を取っています」

――安渕さんは社長就任と同時に、チーフヘルスオフィサー(CHO)に就任されています。社長として、どのように陣頭指揮を取られていますか。

安渕さん「当社は2015年に『健康宣言』を行い、健康経営を推進しています。『ホワイト500』(経済産業省の「健康経営優良法人制度」の大規模法人部門で認定された企業のうち、上位500社のこと)に5年連続で認定されています。統括産業医、産業保健師が健保組合と二人三脚で従業員の健康リテラシー向上に取り組み、社外向けにも健康経営推進部署を設けて社会啓発にも努めてきました。CHOとしては、優れた取り組みを表彰したり、健康経営優良法人として必要な指標の達成を、経営チームと共に推進したりしています」

――コロナ禍を経験されて、どのようなことが課題になりましたか。

安渕さん「従来は、職場、家庭、地域社会という3つの世界を、それぞれ別のものとして我々は行き来していましたが、『在宅勤務』という新しい働き方により、この3つが融合しました。その結果、新しい優先順位や関係性を構築しなくてはいけなくなり、そこに新しい悩みやコンフリクトが生まれてきました。一方で、職場に行かないことによる孤立化という課題も出てきました。統括産業医はこれらの課題に即時に対応し、オンラインによる新しい日常に対応したリモート相談のスキームで、在宅勤務で新たなストレスを感じている従業員のストレスをケアする取り組みを始めて、不調者が増加しないよう努めています。
このような取り組みを迅速に導入できたのは、2015年から『健康経営』に取り組んできた経験や基盤、人事部門や健康経営統括部門が統括産業医や保健師、健康保険組合とともに『アクサウエルネスプログラム』を導入し、従業員の健康づくりのPDCAサイクルを回してきたからこその動きであると思っています」

産業医がいない中小企業をサポート

従業員に対して、経営者はまず「健康宣言」を発信しよう!(写真はイメージ)
従業員に対して、経営者はまず「健康宣言」を発信しよう!(写真はイメージ)

――アクサ生命は全国の中小企業経営者に健康経営の導入・実践を呼びかけています。

安渕さん「自社での取り組みで得た知恵と経験をもとに、中小企業経営者のみなさまがお金をかけずに『健康経営』を導入・実践できるよう、『健康経営アクサ式』と銘打ってサポートプログラムをご案内しています。『健康経営アドバイザー』の認定を受けた当社の営業担当者が、商工会議所や県・市などの自治体、協会けんぽの各支部などの地域のステークホルダーと連携しています。中小企業経営者のみなさまに、『健康経営サポートパッケージ』によるPDCAの運営方法をご紹介し、従業員のみなさまには職域における『食』『運動』『睡眠』の分野での知識や知恵が向上する、楽しいプログラムで行動変容を後押しするコンテンツをご提供しています」

――産業医がいない中小企業に対しては、産業医選任のサポート始めました。

安渕さん「日本では従業員50人未満の事業場では産業医の選任は努力義務であり、全事業場での選任率は3割にも満たないのが現状です。しかし、労働者のストレスのケアのみならず健康増進や職場環境の改善など、産業医による医学的な立場からの支援は極めて貴重です。産業医の選任を進め、産業医のケアを受けておられない従業員のみなさまへのサポートを提供することは、生産年齢人口が減少する日本において、企業や社会の持続可能性という観点でも重要な施策だと考えています。 この社会的課題を解決するために、2021年4月から産業医選任をサポートするサービスを始めました。昨年(2020年)10月から開始した第1弾の産業医によるストレスチェックのプログラムに加えて、オンラインによる健康相談(従業員向け)や産業保健相談(企業向け)、産業医選任のサポートを導入しました。これにより、中小企業の経営者のみなさまが2021年秋のエントリーを目指している『健康経営優良法人認定』取得を強力にサポートすることができると感じています」

――中小企業経営者へのメッセージをお願いします。

安渕さん「企業福利を向上させ、従業員のワークエンゲージメントを高めるために、まず経営者のみなさまには『健康宣言』を行っていただき、従業員のみなさまに対して、トップとしてのコミットメントを発信していただきたいと思います。そして、『健康経営』の実践を通じて、職域における生活習慣の課題を明らかにし、それを解消するための施策を『スモールチェンジ』から始めていただく。従業員の健康づくりは『費用』ではなく『投資』であるという発想が、いまこそ企業経営者に求められています」
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