短時間勤務の人をマネジャーに登用する
――女性の意識改革の研修とは、管理職になるためのモチベーションや意識を醸成する内容ですか。
三田さん「そうですね。テーマは年度ごとに変えていましたが、身近なところから気づきを得るような内容にしていました。現場の第一線で活躍している女性は職場の運営やルールには詳しく部門長にも頼りにされる存在なのですが、会社の経営が今どういう状況になっているのか、百貨店業界においての自社の課題は何かなど、高い視点になると弱くなる傾向がありました。その視点の高さを引き上げる訓練を行いました。また、リーダー研修として自分の強みは何かをはっきりさせ、男性のリーダーと同じにはできないとあきらめるのではなく、女性らしいリーダーの在り方、自分の特性を活かしたリーダー像を探るような内容でした。この研修の参加者が、翌年に昇格したり、管理職に就いたり一定の効果が出ました」
――2018年に女性管理職比率30%を超えて、今後、高みを目指すということでしたが、これから女性を伸ばしていく工夫や取り組みはありますか。
三田さん「単純に男女比を考えるともっと増えてもいいと思いますので、常に前年を超えていくことを目標にしています。ここ2~3年である程度、形にできていることに短時間勤務の管理職登用があります。以前は短時間勤務を終えてフルタイム勤務になってからマネジャー職に登用していましたが、お子さんが2~3人いると20年近く短時間勤務を続けることになる場合もありました。そこで短時間勤務でもマネジャー職に登用してもいいのではないかと3~4年前からモデルケースをつくりながら取り組んでいます。形になってきていて、現在、約20人が短時間勤務でマネジャー職に就いています」
――短時間勤務の方をマネジャーにするにあたって、どんな工夫をしていますか。会社としてどんなサポートをしているのでしょうか。
三田さん「短時間勤務者を登用する際、そのマネジャーのポジションは、できるだけ多層な組織を選定しています。多層というのはその管理職の上に副部長、部門長がいるような上の層が厚いところです。上位のフォローが手厚く入りやすいところというのが一つの考えです。
もともと、短時間勤務の方は時間意識が非常に高いですし、自分が帰った後、部下に仕事を任せられるような体制づくりをしているようです。そのような時間意識に優れ、生産性が高い職場をさらに増やしていけるといいと思います」
――多層なラインに配属させるとのことでしたが、周囲の受け入れのための教育などはありますか。
三田さん「女性の意識改革研修を行った2014年から2年ほど男性の管理監督者研修を実施しました。女性の育成にフォーカスした内容で短時間勤務の部下ということではなく、女性を活躍させる、育成の仕方の内容でした」
――今後予定している取り組みがあれば、教えていただけますか。
三田さん「じつは2020年度から女性に限らず、個の時代に即した多様な部下を育成することを目的とした研修を行う予定でしたが、コロナ禍の影響で実施できなかったので2021年度に実施する予定です。あとは私の個人的な考えなのですが、今後のダイバーシティのキーワードは『アンコンシャスバイアス』だと思っています。『私は女性だから...。きっと女性はこうだろう。男性だからこうなんだ』という、無意識の偏見が女性に限らず、個の成長や組織の活性化を妨げる可能性があります。これに関して、今後何かできそうか、どうしたら効果的なのか、考えているところです」
(聞き手 水野 矩美加)
プロフィール
三田 理恵(みた・りえ)
高島屋 人事部ダイバーシティ推進室 室長
大学卒業後、1999年入社。新宿店で食料品売り場を担当。人事部のパリ研修生などを経て人事部へ。新卒・中途採用、教育などに携わり、2009年にグループ企業である東神開発へ出向、人事業務を担当。12年に育児休職を取得後、高島屋本体の人事政策担当。15年に2度目の育児休職を取得、16年復職。
2019年より現職。