社員が場所や時間にとらわれずに働ける「Smart Choice」
――「制度」は、どのようなものを整備されていますか。
牧野さん「社員が場所や時間にとらわれず働くことができる『Smart Choice(スマートチョイス)』という制度を随時拡充してきました。これは、自分の職務・環境に合わせて主体的に働き方や環境を選ぶことができるという制度です。場所でいえば、在宅勤務のほか、東急が所有しているサテライトオフィスなどでのテレワーク勤務が可能ですし、勤務時間では、通常の始業時刻を基準に勤務時間を繰り上げ、繰り下げできる『スライド勤務』や、2020年度には勤務中に一時的に抜けるという選択肢も自宅保育・介護などの事由がある社員を対象に特例で可能としています。
2017年にはメンター制度も導入しました。役員~部長級と部長級~女性課長・課長補佐級といったようなペアでメンタリングを行うのですが、19年度までの3年間で、すべての役員がメンターを経験してダイバーシティを実感したことで、今ではダイバーシティマネジメントを支える基盤となっていると考えています」
――取り組みの成果は、どのような形で現れてきていますか。
高橋さん「数値目標としては、女性管理職の数と男性の育休取得率の2つを掲げてきました。2014年に設定した『2020年度末までに女性管理職の数を40人にする』という目標は、19年に1年前倒しで達成することができました。また男性育休取得率は、14年は全国平均と同じレベルの2.1%と低かったのですが、19年には82.1%までに伸びています。
次なる目標として、2023年度までに女性管理職の割合を、現在8.4%のところを10%に、男性育休取得率を100%にすることを掲げています。
社員の意識の変化も感じられるようになりましたね。毎年、東急グループのうち当社含む15社で女性管理職を集めたフォーラムを行っており、ここでのアンケートでは『上位職を目指したい』と回答した女性管理職と管理職候補者の割合は7割近くになっているという結果が出ています。こうした結果からも、さまざまな施策に取り組んできた成果が現れていると感じます」
――今後の課題やさらなる取り組みがあれば教えてください。
牧野さん「価値観の多様化が進み、さまざまな働き方が可能となりました。さらにコロナ禍でテレワークが主流となっているいま、管理職にはこれまでより高いマネジメント能力が求められています。すでにテレワーク・マネジメント研修などのスキル向上策を始めていますが、さらに、1対1の対話などのコミュニケーション力の向上が図れるような取り組みなど、多面的にダイバーシティマネジメント力(多様性を活かす力)の向上を図っていきたいと思っています」
高橋さん「これまで主に女性活躍を中心に推進してきましたが、これからはダイバーシティには性別や年齢等属性にとらわれないさまざまな切り口があるということも、全社に紹介していきたいですね。 2020年からは『ちがいをちからに』というスローガンを社内で使い始めました。この言葉どおり、ダイバーシティは、働きやすさだけではなく、会社の成長を加速させる取り組みだということをさらに浸透させたいと思います」
(聞き手:戸川明美)
プロフィール
高橋葉子(たかはし・ようこ)
東急株式会社 人材戦略室労務企画グループ ダイバーシティ推進担当課長
大学卒業後、東京急行電鉄㈱(現東急株式会社)に入社。生活サービス事業部門のスポーツ、メディア、セキュリティ事業における新店舗開業・沿線情報サイトの開設、営業・販売促進マネジメントなどに携わる(出向含む)。人材戦略室での採用業務を経て、2014年10月から現職。
牧野彩(まきの・あや)
東急株式会社 人材戦略室労務企画グループ ダイバーシティ推進担当主事
大学卒業後、東京急行電鉄㈱(現東急㈱)に入社。生活サービス事業部門でPASMOのビジネス活用、航空会社との提携クレジットカード発行、電力小売事業など複数の新規事業立ち上げに携わる。産休・育休を経て2019年4月から現職。