東急沿線の街づくりに向けて各種サービスを展開している東急株式会社。経済産業省と東京証券取引所が女性活躍推進に優れた上場企業を選定する「なでしこ銘柄」に8年連続で選ばれているほか、2020年3月にはダイバーシティ経営に取り組み中長期的に企業価値を生み出し続ける企業の「100選プライム」にも選出された。
「さまざまな方向から、女性活躍・ダイバーシティ推進の取り組みに挑戦してきた」という東急 人材戦略室労務企画グループ ダイバーシティ推進担当課長の高橋葉子(たかはし ようこ)さんとダイバーシティ推進担当主事の牧野彩(まきの あや)さんに聞いた。
「制度」「風土」「マインド」の3つのアプローチ
――運輸業というと、男性が多い職場のイメージがあります。そうした中で、女性活躍やダイバーシティ推進の取り組みを始めたきっかけはなんだったのでしょうか。
高橋葉子さん「女性活躍やダイバーシティの取り組みに注力し始めたのは、2013~14年のことです。当時は、女性の社会進出の拡大や少子高齢化、グローバル化やデジタル化など社会環境が大きく変わりつつあり、お客さまの価値観も多様になっていった時期でした。こうしたニーズの変化に対応するためには、鉄道をはじめとする生活に密着した幅広いサービスを提供する当社側にもさまざまな個性や能力をもつ人材を結集させることが不可欠と考えました。イノベーションを生み、社会課題を解決して、持続的な成長につなげることを目指して、こうした取り組みを始めました」
牧野彩さん「当社は、『鉄道』『都市開発』『生活サービス』の3つの柱で事業展開してきましたが、2019年秋に分社化し『鉄道』事業は東急電鉄株式会社(東急電鉄)が実施することになりました。そのため、現在の当社(東急)では、社員の男女比はおよそ6対4となっており、女性比率が高くなっています。」
――社内に新しい考え方を浸透させていくにあたって、どのようなことを心がけたのでしょうか。
高橋さん「アプローチとしては、『制度(せいど)』『風土(ふうど)』『マインド』という3つをダイバーシティ推進に取り入れることを目指しました。『制度』を作ったとしても、それを使えるような社内の雰囲気がなければ意味がないという点で企業の『風土』は大切ですし、社員一人ひとりの意識が向上しないとダイバーシティ推進が結実しないというところでの『マインド』アップも必要です。この3つをバランスよく高めていくというところを強く意識して進めてきましたね」
牧野さん「具体的には、推進体制を整えるために、2013年に、部署を横断する『ダイバーシティ推進ワーキンググループ』を作り、翌14年にはダイバーシティの専門部署を新設しました。2016年からは、経営トップと社外取締役が、将来的な人材戦略について議論する『人材戦略に関するアドバイザリー・ボード』を定期的に開催しています。さらには2015年からスタートした中期経営計画の中で、『ダイバーシティ』、『ワークスタイルイノベーション』を明記し、経営戦略としてのダイバーシティ推進や働き方の取り組みを明確に打ち出しました。こうした体制づくりやトップのコミットメントなどによって、徐々にダイバーシティを推進する風土が醸成されてきたと思います」