「なでしこアカデミー」で管理職になりたい女性が増えた
――やはり意識を変えるということですね。
藤本さん「はい。意識が変わらないと変わりませんから。ただ、意識を変えるだけではなく、行動も変えなければなりません。自分の状況を開示して伝えることや、コミュニティやセミナーに参加することによって気づきを得て、主体者意識を根付かせる工夫をしてきました。
2013年には『イクメン推進プログラム』という子育て中の男性社員を対象にしたコミュニティをつくり、男性の家事・育児経験は職場での働き方にも活かされる、子どもへの接し方が部下指導にもつながるなど男性目線の講演会も実施しました。
2012年にグループ横断で女性の課長級以上の女性管理職を集めた『Women`s Management Community』をつくりました。ここではネットワークづくりとロールモデルの輩出を目的にして、マネジメント力向上につながるようなセミナーを5年ほど続けました。その後は女性の管理職を輩出するためには候補者の育成が大切ということで、管理職候補の母集団を形成することとなり、2017年『なでしこアカデミー』を新設。プレゼンテーションや、マネジメントを担うことを意識したセミナーを実施しています。この『なでしこアカデミー』はとても好評で毎回受講者も非常に多かったです。管理職を目指したいという女性たちが増え、意識変革につながったセミナーでした。
この他にも、女性活躍、ダイバーシティすべてに言えますが直属の上司の理解が無いと進まないため、管理職の意識改革のために2014年『ダイバーシティ・マネジメントセミナー』を開催。今までに20回ほど行い、管理職を中心にのべ約5500人が参加しました。参加者のアンケートでは、意識が変わり、行動も変えていきたいと回答した管理職が大多数でした」
――セブン&アイグループならではの取り組みは、他にもありますか。
藤本さん「各事業会社で業種業態が違い、課題も異なりますので、各事業会社での活動も大切ですが、グループでのシナジーを意識しています。年3~4回、『ダイバーシティ推進連絡会』を開催しており、中核事業会社の何社かのダイバーシティ推進担当、あるいは人事担当者に集まってもらい、自社のダイバーシティのケーススタディを議論し共有。それを各社に持ち帰って活用してもらっています。これは各事業会社への波及効果として進んでいきました。ある事業会社で作成したものが良かったので、別の事業会社への広がりをみせるなど、横の連携につながっています」
――今後、着手しようと考えていることはありますか。
藤本さん「もう一度、『女性活躍』ということに立ち返り、グループ各事業会社横断で管理職候補の女性たちに集まってもらい、研修を行う予定です。視座を上げるべく知識を学ぶとともに、私たちはセブン&アイグループの一員だという意識付けと、今後の事業間の人材交流につながるネットワークづくりもしていきたいと考えています。
私たちは私生活での経験を仕事に活かし、仕事での経験を私生活で活かすこと、つまり仕事と生活が相乗効果を生み出す『ワーク・ライフ・シナジー』を大切にしています。多様な従業員一人ひとりがイキイキと活躍し、働きがいをもって仕事ができる職場環境を今後も作っていきたいと思います」
(聞き手 水野矩美加)
プロフィール
藤本 圭子(ふじもと・けいこ)
セブン&アイグループダイバーシティ&インクルージョン推進プロジェクトリーダー
セブン-イレブン・ジャパン取締役常務執行役員 人事本部長
大手企業、大手ホテル勤務を経て1988年にセブン-イレブン・ジャパン入社。社長秘書を務め、2006年に執行役員秘書室長に就任、12年からセブン&アイ・グループダイバーシティ&インクルージョン推進プロジェクトのリーダー を務める。
16年からセブン-イレブン・ジャパン取締役常務執行役員、17年に特例子会社のテルベ代表取締役社長(現職)、20年から現職。