「一歩先行く」女性活躍 小売業ならではの「ワーク・ライフ・シナジー」を推進 セブン&アイHD 藤本圭子さん

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男性の「子育て」意識が変わると仕事力が上がる

――意識改革の活動というのは、どのようなものでしょうか。

藤本さん「たとえば管理職に対しては、世の中の変化を理解し、多様性を活かすようなマネジメントをしていかないと、これからは立ちいかなくなるという意識をしっかり持ってもらうセミナーです。また、男性社員の中には、家事や子育ては配偶者に任せきりという男性がいるのは事実ですので、子育てに取り組むことによって仕事にも良い影響があるという意識の変容を促すセミナーを行いました。一方、女性に対しては子育て中に仕事をセーブしようと考えてしまうのではなく、子育て中ならではの生産性の高い仕事の仕方も紹介しながら、一緒にキャリアも目指すことを促すようなセミナーを実施してきました」
休日も安心して子どもを預けられる「スポット保育」(2017年撮影)
休日も安心して子どもを預けられる「スポット保育」(2017年撮影)

――女性活躍推進の取り組みは、2012年からセミナーが中心だったのでしょうか。

藤本さん「はい。グループ全体で推し進めていくうえで、一番効果があるのはセミナーが良いと判断しました。新しい知識、新しい情報を注入することで少しずつ意識の醸成、変容を図り、企業風土を醸成していこうと考えました。
セミナー以外にはグループ内のネットワークづくりも行いました。ダイバーシティ推進プロジェクトが発足する前に、女性35人とその直属の上司の合計70人にインタビューを行ったところ、今の仕事が大好きで続けていきたいが、今後の結婚、出産、育児を考えると、このまま継続することに不安を感じる、という意見が多かったのです。
この不安を取り除きたいと、子育て中の女性を対象にして、昼休みに悩みの共有ができるネットワーク『ママ's コミュニティ』をつくりました。この取り組みは好評で、グループ各社ごとに同じようなコミュニティがつくられたり、ここで出た意見が施策につながったり、制度化されたこともあり他にも派生していきました。たとえば、祝日に社内に託児所を開設する「スポット保育」の取り組みがあります。弊社グループは小売業ですので、祝日は基本的に通常勤務日となっていますが、保育園などが休園になることも多く、子育て中の社員が子どもの預け先探しに苦労するという課題がありました。そこで、事業所の会議室で臨時託児を行う「スポット保育」という取り組みを2016年からテスト実施し、その後制度化に至りました。現在はコロナ禍で一時ストップしていますが、その時々の状況に応じた最適な施策や制度を、社員の意見をもとに今後も検討、実施していきたいと考えています」

――当時、制度面はどうだったのですか?

藤本さん「制度は整っており、利用もありましたが、当時はまだまだ子育てしながら管理職になっている方が少なく、ロールモデルがいない中で、どのように仕事と育児の両立をしたらいいのかイメージしにくかったのだと思います。また、育休からの復職後の不安や遠慮も多く、周囲の理解もなかなか進んでいなかったと思います。
いかに制度が整っていても女性活躍推進は進まないんですね。今の状況を上司、周囲の人に開示して理解してもらうこと。自分のパートナーにも話すことが必要です。
2017年、女性の仕事と育児の両立はパートナーの協力なくして始まらないということで
『ママ's コミュニティ』に男性も加わり『子育てコミュニティ』と名前を変えて再出発しました。妻の悩み、夫の悩みがそれぞれ理解できて、非常に相互理解が深まったように感じます」
水野 矩美加(みずの・くみか)
水野 矩美加(みずの・くみか)
アパレル、コンサルタント会社を経てキャリアデザインをはじめとする人材教育に携わる。多くの研修を行う中で働き方、外見演出、話し方などの自己表現方法がコミュニケーションに与える影響に関心を持ち探求。2017年から、ライター活動もスタート。個人のキャリア、女性活躍、ダイバーシティに関わる内容をテーマに扱っている。
戸川 明美(とがわ・あけみ)
戸川 明美(とがわ・あけみ)
10数年の金融機関OLの経験を経て、2015年からフリーライター、翻訳業をスタート。企業への取材&ライティングを多く行う中で、女性活躍やダイバーシティの推進、働き方の取り組みに興味をもつ。
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