ビジネスパーソンは何十年ものあいだ、オフィスに出社して仕事をすることが当たり前でした。ところが2020年、新型コロナウイルス感染症の影響でテレワークが一気に浸透しました。この変化を機に、テレワークを本格導入してオフィスを縮小する会社もあるほどです。
さて、管理職のみなさん。部下のマネジメントはテレワークでも、きちんとできていますか?
働く環境が変わったのですから、マネジメントも従来どおりではうまくいきません。テレワークにおける部下への働きかけのポイントを解説します。
お互いの顔が見えない不安があるテレワーク
部下のマネジメントの前提となる、出社(オフィスへ行って仕事をすること)とテレワークとの違いから考えたいと思います。働く場所が変わったことによって、具体的には、どのような違いが生じるのでしょうか。
テレワークが出社と最も異なる点は、同僚と顔を合わせずに仕事をすることです。管理職にとっては、部下の一人ひとりが、今何をやっているのかはわかりませんし、部下の仕事の進め方や進捗も把握しにくくなります。
部下がきちんと仕事を進めているのか、心の片隅で心配な状況がずうっと続くわけです。部下にお願いしたタスクの期限になって初めて、そのタスクができていないことがわかって愕然とした......という経験がある方もいらっしゃるかもしれませんね。
逆に部下にとっては、わからないことや相談事を、上司に「ちょっと聞く」ことが難しい環境がテレワークです。上司から「いつでも連絡していいよ」と言われていても、心理的な抵抗から、なかなか聞けない場合もあるでしょう。
また、キャリアが浅い部下や自分に自信が持てない部下は「自分だけがこんなに仕事ができていないではないか」と、ひとりで悩みを抱え込んでしまう恐れもあります。
このように上司も部下も、テレワークでは周囲の状況が見えないことによる戸惑いや不安が生じやすいのです。
テレワークだからこそ管理職が意識したい2つのポイント
お互いの様子がわかりにくいからこそ、管理職としては「部下の状況把握」と「心理的安全性の醸成」を意識したいものです。
まず、部下がどのような環境でテレワークをしており、どのような心理状態なのか、できるだけ把握するように努めましょう。オンラインで1対1で気軽に話す時間を設けることをオススメします。
部下一人ひとりについて、仕事用の机や椅子が整っているのか、自宅では仕事用の個室があるのか、家族のケアをしながら仕事をする状況ではないか、などを把握しておきたいところです。少々プライベートな内容に踏み込みますので、部下が話してくれる範囲で構いません。
部下の状況を把握することで、テレワークで働きにくい環境にいる部下をこまめにケアしやすくすることが目的です。
そのうえで目指したいことは「心理的安全性」の醸成です。心理的安全性とは、ハーバードビジネススクールのエイミー・C・エドモンドソン教授が提唱した概念です。組織が目的を達成するためには、メンバーがお互い率直にものが言え、ミスをしても非難されることはない「心理的に安全な状態をつくること」が必要であると説いています。
これは単に仲の良い、ぬるま湯のような組織をつくることとは違います。心理的安全性がある組織とは、あくまで目標は高く掲げられ、目標達成を全力で目指す緊張感があることが前提です。
それでは、テレワークであっても高い目標を達成する組織にしていくために、管理職が具体的に行うべきことを見ていきましょう。(Miyo Takako)
プロフィール
Miyo Takako(みよ たかこ)
人材・キャリア系の記事を中心にライターとして活動。コラムやインタビュー記事を多数執筆している。経営者や大企業執行役員へのインタビュー経験も持つ。本業では人材業界で10年以上勤務し、企業の人材育成や組織開発の提案・アセスメントツールの企画、講師、学習コンテンツ開発に従事。テレワークソリューションバンク編集・ライター