「営業全開には、ほど遠い状況ですよね」――。東京都内の広告・イベント業40代営業幹部の声です。
新型コロナウイルスの感染第3波が世界中を襲うなか、2020年秋以降は出社してもテレワークができるよう、ようやく体制が整ったのでしょう。「社内からZOOM繋いでます!」と言われることが増えました。コロナ禍以前からクラウド型での商材を持っている会社は、営業担当者もオンラインでのデモ説明などに慣れており、それが売り上げに追い風になっていると聞きます。
しかし、広告・イベントに関わる前出の幹部の場合、もともと間接販売で直接顧客とはやり取りが少ないことから、そう簡単にはオンラインというわけにもいかず、試行錯誤が続いているようです。
コロナ禍を口実に、お客が営業マンに会わない
コロナ禍での営業の課題には、
- ・新規の見込客が獲得できない
- ・既存客からの商談発掘が進まない
- ・商談案件のクロージングが難しい
- ・商談スピードが上がらない
こうした課題を、よく耳にします。
一方で、通常勤務に戻す会社も増えていて、「ウェビナー疲れ」といわれるほど、ウェビナーも浸透してきています。これまでの発想なら、通常勤務に戻す=生産性をもとに戻すということになりますが、出勤も増え、セミナーにも関心があるのに、多くの営業マンが苦戦しているのはなぜでしょうか。
今回は、こうした中堅・中小企業の営業について、テレワーク営業エバンジェリストの世古誠さんに話を聞きました。
世古さんによると、昨年10月前後から通常勤務に戻している会社が多くなっているにもかかわらず、営業が難しいという声に疑問を感じ、このような仮説を立ててみたそうです。
「通常出勤している会社が増えているのに、新規獲得が難しい。商談がタイムリーにできない。そんなハズがないだろう。もしかして......。
といった疑問が湧いてきます。
- ・営業マンと面談すること以外でも『十分な情報収集ができる』?
- ・情報収集 ~購買行動の一連を『非接触』で行っている可能性がある?
実際に経営者に聞いてみると、その大半は『そうだ』と答えるのです。そんな経営者は、従来は
ことで情報を得てきたのですが、これらの『常識』が『常識ではなくなった』、『当たり前』が『当たり前ではなくなった』のです。
- ・情報は営業マンから提供してもらう
- ・営業マンの提案をもとに検討を進める
- ・可能な限り、営業マンと会って会話する
これはつまり、在宅勤務で営業するからテレワークが必要になったわけではなく、単に顧客の価値観が変化し、『価値のある営業マン』としか面談しなくなったために起こったことなのです。時間と場所を共有しない時代になった。これが『テレワーク時代』なのです」
世古さんは、そう説明します。
なるほど、この説明には私自身、日常的に営業を受ける立場としても納得です。ただ、多くの中堅・中小企業では、既存事業の既存顧客、既存手法がある中で、大胆な商品変更や新規事業には抵抗感があるはずです。
そこで、世古さんにテレワーク時代の営業について聞きました。
――先行き不透明な中で、新しい事業を始めるわけにはいかない。でも、今のままではいけないことはわかっている。では、どうしたらいいのでしょうか。
世古誠さん「顧客を絞り込むこと、そして営業フローを書き直すことです。『営業が足で稼ぐ』、つまり多くの接点を持つことが必要なのは不変でしょうが、顧客に『来ないでください』といわれる時代、下手な鉄砲も当たらない時代ですので、狙いを定めて打ち込むことが大事です。
顧客に選ばれ続けるために、質を向上すべきなのです。『絞り込んだ顧客に刺さる提案、有益な情報を提供するのです』。確実な準備、調査、仮説立案などの質を高めるためには、顧客を『絞り込む』しかないのです」