脱ハンコ、脱領収書、ペーパーレス化......。いまやニュースやインターネットでも、デジタル化のニュースを見ない日はありません。
「脱ハンコ」が中央省庁で積極的に見直しが図られていることや、2020年10月からはキャッシュレス決済の明細が証拠として活用できるなど、脱ハンコ、ペーパーレス化の流れは止まりそうにありません。
とはいえ、ハンコを押すにもさまざまな事情があります。「脱ハンコ」はそう簡単ではないのです。
「ウチの総務は動きが鈍くて...」にイラッ!
「ハンコのために月に何度か出勤しています」――。ある程度の規模がある会社の何人かから、このセリフを聞きました。一見、そんなムダななこといつまで?! と思ってしまいがちですが、大手の取引先の慣例に合わせる必要があるなどの諸事情がありますし、一方的に慣例を変えるわけにはいかないのが実情です。では、大手取引先の対応が難しいのであれば、中小の取引先でできるところから、デジタル化していこう! それでも、そんな簡単ではないという声も、管理部門の現場から聞こえてきます。
「A社含む何社かはどうしても先方指定のこの様式、この出し方じゃないとダメなんです。だから、その他をデジタル化すると手続きが二重になってしまうの、そうすると業務が回らくなりそうで......」
なるほど。会社によっては中途半端に導入するとフローが多重化することになり、現場にしわ寄せがくるということもあるようです。言われてみればわかりますが、他部門からするとその実態が見えないため、「ウチの総務は動きが鈍くてさぁ」などと言われた時には、内心イラっとすること必至です。
「諸事情があるのよ!」と言いたくなるでしょう。
では、「取引先の書類ではなく、社内ルールを見直そう!」
ところが、これも会社によってはなかなか大変なようです。社長から直々に指令が出ていれば、その「印籠」を片手にデジタル化を進めるという手もあるかもしれませんが、社内であっても部門をまたぐ業務については、「導入するとうちの部の負担が増える」とか、「〇〇さんと〇〇さんの調整が大変で...」 などの事情があれば、調整が大変になることもあります。
なかには、デジタル化することで仕事が減る?! という社員もいるかもしれませんし、そうした人が隠れた抵抗勢力になるかもしれません。
つまり、取引先がダメなら社内からという、そんな簡単な話でもないのです。