専門家に任せると申請の数を増やせる
たとえば、雇用シェア(厚労省の説明の中では、在籍型出向制度)を行うことで、雇用調整助成金の対象になる制度もあります。これは、経済上の理由で事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、雇用の維持を図ることを目的に行う出向です。
「インバウンドの外国人観光客の減少により、観光バス運転手の雇用維持に苦慮している」(観光バス)
「感染症の影響などにより、稼働率が大幅に低下したため、4月入社の新入社員を自宅待機させていたが、社員教育を兼ねて出向を活用したい」(旅館・ホテル業)
などは、その出向のケースです。
仕組みとしては、産業雇用安定センターがこうした送り出しと受け入れの双方ニーズをマッチングするという仕組みです。こうした本人意向も関わる仕事については、拙速に進められないこともあり、まだ会社の体力があるうちに、下調べしておきたい助成金制度といえます。
とはいえ、ほとんどの経営者はなんらかの助成金の資料に目を通したことはあるのではないでしょうか。
「たしかに、仕組みも手続きもわかったけど、煩雑な割には、もらえる時期がかなり先だし、少額だ」
そうこぼす経営者もいますし、
「(専門家に依頼しなくても)書類なら自分で書けるしなぁ」
そんな経営者も、きっと多いことでしょう。
たしかに、助成金の申請は自分でできるのですが、専門家に任せる効果が大きいのは、「申請の数を増やせる」ということかもしれません。
助成金の申請には、賃金台帳や雇用契約書など、雇用関連書類の準備が伴いますが、それらの資料をそろえて、複数の該当助成金に提出することで、受給額や組織整備が進むという側面もあります。
売り上げが上がっても、下がっても、商品開発に店舗の見直し、新規の営業などとやることがいっぱいで忙しいのが中小企業経営者です。
「難局への備えはする。本業は自分たちでやる。だから、それ以外は任せる!」
この先不透明な今、こうした判断が1年後の結果を分けることになるかもしれません。(高井信洋)