「頑張れ」と背中を押し続けた上司の存在
――今、お話をうかがった女性活躍推進の経緯を体験し、2011年にはダイバーシティ推進グループで課長として推進する側でもあった藤中さん。実際に当事者としての体験を教えていただけますか。
藤中麻里子さん「2003年、トップの明確な指示、ビジョンがあり大手金融機関初の女性活躍推進の専門部署をつくったときに、本当に眠っている課題を知るために全国からいろいろな現場の人を集めて声を聞き、メンバーが会社に提言するダイバーシティコミッティを立ち上げています。私も第一期生で参加しました。
私が産前産後休暇・育児休業を取得したのは、2000年です。当時、制度はあっても使っている人は少ない状態でした。休暇を利用する時に上司に報告すると、職場のメンバーに協力してくれるよう話してくれました。当時周囲の営業社員は全員男性だったのですが、子どもができたら女性は仕事を減らすというのではなく、できる範囲で成果を出すことを求められているということが伝わったように思います。
その後、子どもの小学校入学と同時に育児短時間勤務制度を利用しました。短時間勤務明けに管理職に就いたのですが、この時の上司が『担当を減らさないから、やってみて、もしできなかったら、私が責任を取ります。優先順位をつけて、短い時間でみんなと同じように成果を出せたなら、コツをみんなに伝えてほしい』と言われたんです。そこで、制度を利用するだけでなく、職場に貢献できるかもしれないと思い、やる気が出て、それから仕事の優先順位や生産性を良く考えて仕事をするようになりました。短時間勤務を取得しているあいだ、応援しているから頑張れと上司から背中を押され続けられたことが大きかったと思います」
――女性管理職を増やしていく取り組みにも注力されたそうですね。
藤中さん「2011年、女性の管理職比率が3%程度だった時期に、ダイバーシティ推進グループ課長になりました。もっと女性を経営層に増やしていくために何が足りないのか、管理職一歩手前の女性約300人を人事部メンバーで手分けして訪問し、インタビューした時に『周りに女性の管理職がいないので、どうやったらいいのかイメージがわかない。覚悟が持てない』という意見がでたことから、マネジメントスキルや経営視点の習得と同時に上司が女性にも役割付与や経験する機会を与えてくれるように『女性経営塾』をスタートさせました。現在、塾の卒業生が確実に部長などの管理職になっています。また、現場に戻り、今までの経験から上司の影響が大きいと感じていますので、自分の上司だった人のような上司を育てることやっていきたいと思っています」