外国人社員比率5割超え 女性活躍、ジェンダー課題さまざま
――女性リーダーの育成や開発のために、具体的にはどのような施策を行っていますか。
小島さん「国内で言えば、グループの若手女性向けにキャリアセミナーを実施しています。入社3年目の女性総合職が対象で、キャリアに関する講義や先輩社員によるパネルディスカッションなどを行っています。
入社して数年が経ち、将来について考え始める人も増えてきますので、キャリア形成、仕事とライフイベントとの両立について考える良い機会になっていると思います。勤務先に同年代やロールモデルとなる先輩社員がいないケースもあり、女性同士のネットワーキングの場としても活用されていますね。一方、若手層は女性の人数も増えてきましたので、性別を限定せずに同様のキャリアセミナーを実施する事業所もあります。 海外のグループ会社を含む主な取り組みとしては、2016年度から『Global Women's Summit』=写真を参照=を実施しています。日立製作所の東原(敏昭)社長をはじめとする幹部からのメッセージ、日立グループ内のリーダーが登壇するパネルディスカッション、キャリアやリーダーシップをテーマとしたワークショップなどを通じて、ジェンダーダイバーシティに関する啓発を図っています。
2013年度にイギリスで始まった取り組みをグローバルに拡大したもので、2019年度は初の日本開催となり、180人ほどが参加しました。会議はすべて英語で行われ、昨年からは男性も参加してもらうようにしたのですが、まだ数は少ないので、男性にとってはマイノリティを感じることができる場にもなっているようです。今年は新型コロナウイルスの影響で従来と同じ形での開催はできませんでしたが、来年以降もこの取り組みは続けていきたいと考えており、開催方法を検討しています」
――多くのグループ会社を抱える日立グループですが、海外を含む女性活躍推進やダイバーシティ推進の取り組みの現状はどうなっていますか。
相馬さん「日立グループでは、2018年度末から、グループ各社に女性管理職に関する目標値を設定してもらうようになりました。この取り組みに参加している会社は500社強あります。日本ではやはりまだ女性管理職の少なさが一番の課題ですが、地域によってはジェンダー以外の課題を挙げる会社もあり、国や地域の状況、ビジネス特性にそった指標を策定してもらっています。女性の比率だけを取り上げることが、逆差別となると考える国もありますので、共通した指標を作ることは難しいですね。多くの事業体が、達成期限を2~3年と置いているので、今年か来年末には、達成度が現れはじめると思います」
――今後の女性活躍を含むダイバーシティ推進の取り組み、強化ポイントなどございましたら、教えてください。
相馬さん「2020年4月に、日立グループは新たな役職、チーフ・ダイバーシティ&インクルージョンオフィサーに、イタリアでカントリーマネージャーを務めていたロレーナ・デッラジョヴァンナが着任しました。このたび晴れて来日することとなり、グローバルでどのようにこの取り組みを強化し、事業に貢献していけるか話し合う予定です。こうした動きは、きたる第4フェーズにつながるものと捉えています。
具体的には、海外や日本の事業で、意思決定層に、女性はもちろん多様な国籍の人財や日立グループ以外の経験をもつ人財をどう取り込んでいけるのか、ビジネスと連携しながら施策を考えていくことになるでしょう。日立はM&Aを経て、今では外国人の社員比率が全体の5割を超えています。今後、ダイバーシティ&インクルージョン推進の強化はますます重要な課題となりますので、新たなリーダーが加わった今、この動きに弾みをつけていきたいと思います」
(聞き手:戸川明美)
プロフィール
相馬 知子(そうま・ともこ)
日立製作所 人財統括本部ダイバーシティ推進センタ部長代理
大学卒業後、日立製作所に入社。IT事業部門、工場、海外など、さまざまな部門で人事・人材育成関連の業務を経験。部門の人事担当として、ダイバーシティ推進の業務にも携わる。2020年4月から現職。
小島 佳奈(こじま・かな)
日立製作所 人財統括本部ダイバーシティ推進センタ員
大学卒業後、日立製作所入社。グループ会社などで人事業務全般を担当した後、2016年から現職。