「ミスしないようにね」の言葉を、脳はどう受け止めているのか?
Aさんが後輩に対してどのような言葉をかけているか、聞いてみると、
「ミスをすると、みんなの迷惑になるからミスをしないでね」
「あなたはミスをしやすいのだから、きちんと注意してね」
と、声をかけているとのことでした。
もちろん、Aさんの言うことが間違っているという訳ではありませんが、注意していただきたいのは、次の2点です。
●脳は否定形をなかなか理解しようとしない
たとえば「ミスしないようにしてね」という声のかけ方があります。それを受け取った相手は多くの場合頭の中で、
「ミスをしないように、ミスしないように......」
と、自分自身に声をかけます。
そうすると、脳は否定形である「しないように」という部分は理解せず、「ミス」という部分のみを抽出して指令を出してしまうとされます。そのことによって、無意識のうちにミスをして、迷惑をかけてしまうのです。
●人は言われたとおりの人になる
最近ではご存じの方も多くいるかと思いますが、「レッテル貼り」という「あなたは〇〇な人だ」と言われると、無意識のうちにそれが自分に刷り込まれ、そのとおりの自分になってしまう、という心理学的な作用があります。
ふだん何気なく「あなたって〇〇ね」と、人に対して伝えるシーンがあるかと思いますが、それが自然と相手を〇〇な状態にしていってしまうのです。
もちろん、それがポジティブに働けばよいのですが、今回のケースでいえば、「あなたはミスをしやすい」と伝えることで、受け取った相手は自分自身をその言葉に合わせて行動してしまい、より相手のミスを引き出してしまっている可能性があるわけです。
このように、言葉の使い方は非常に大切です。
誰かに伝える言葉や、誰かに言われる言葉、そして自分自身が自分に対して使っている言葉が、自分を決めています。「しないこと」ではなく、「したいこと」にフォーカスを当て、それを伝えてあげましょう。ミスをしないことで、どうしたいのかを考え、場合によっては相手に質問を投げかけて引き出すと、よりうまくいくと思います。
さまざまな場面で、ふだん自分がどのような言葉を使っているか、ぜひ一度考えてみましょう!
まずは自分を知ることが、「心の筋トレ」の第一歩です。(くぼた茜)