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警察官としての「最後の仕事」

   1995年の春、オウム真理教の女性信者が、特別手配中(当時)の男を匿っていた容疑で逮捕された。マンションで身柄を確保し、その後、取り調べが進められた。女性は、勾留期間が最長まで延長され取り調べが行われたが、極めて素直で、まったく苦労はなかった。

   取り調べの合間に、普段教団で何をしていたのかを問いただすと、女性は淡々と答える。

「大学などの周辺で学生に声をかけてサークルの勧誘していました。その後、何回か喫茶店などに2人で行ったりして付きあい始めます。そして、いろいろ下調べしてから『よく当たる占い師がいるから会いに行きましょう』と言って教団施設に誘導していました」

   もちろん、その占い師は教団関係者。ターゲットになった学生は、それまでのやり取りの中で、女性から家族構成や考え方などを事前に聞かれ答えているので、占い師から簡単に心理操作され、信じ込んでしまう構図だ。次の段階では、誰もが持っている、地震や核爆弾に対する恐怖心を利用してマインドコントロールして行く。このようにして、次々と信者を増やしていったという。

   この現場は、警察官としての「最後の仕事」になった。1月に阪神淡路大震災を体験し、続けて一連のオウム事件の捜査に当たったことで、私の人生観は変わった。その年の冬のボーナスをもらって、警察を辞めた。寒さが身にしみる12月のことである。

援川 聡(えんかわ・さとる)
1956年生まれ。大阪府警OB。元刑事の経験を生かし、多くのトラブルや悪質クレームを解決してきたプロの「特命担当」。2002年、企業などのトラブル管理・解決を支援するエンゴシステムを設立、代表取締役に就任。著書に『理不尽な人に克つ方法』(小学館)、『現場の悩みを知り尽くしたプロが教える クレーム対応の教科書』(ダイヤモンド社)など多数。
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