「格差」と「大クレーマー時代」の関係 「サイレント・マジョリティ」はこうして豹変した

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ストレス社会も一因

   クレーマーが企業の顧客第一主義を逆手にとっていることは、すでに述べた。そこで、クレーマーが急増している社会的背景について説明したい。

   このところ、「格差社会」がよく話題にのぼる。じつは、大クレーマー時代と格差社会は切り離せないと考えている。

   勝ち組・負け組、あるいは上流・下流などと線引きをしたがる社会風潮の中で、「言わないと損をする」と焦り、さまざまなことに不満をぶつける人が増えている。彼らの多くは、従来サイレント・マジョリティとして沈黙していた一般市民だが、「得したい」「損したくない」という思いにかられて、企業だけなく、官公庁や学校、病院、さらに近所づきあいや老人クラブにまで、クレームを持ち込むようになっているのだ。

   また、過重ストレスもクレーマーの増加の一因としてあげられる。

   競争が激しいビジネス社会で生き残るために、企業は日々、サービスの向上を目指している。ただ、サービスの向上は、利用者に恩恵を与えますが、サービスを提供する側(従業員)にとっては、過重ストレスの原因にもなりかねない。従業員は、限られた時間で多くの仕事をこなさなければならず、これまでの何倍もストレスがたまってしまうのだ。

   たとえば、宅配便の時間指定サービス。「夕方の6時に持ってきてほしい」といえば、その時間帯に持ってきてくれる。一昔前には、これほど細やかなサービスは期待できなかったが、いまでは当たり前になっている。それは、とりもなおさず、それだけ宅配業者の負担が増えたことを意味する。サービスという名の仕事の負荷が増え、ストレスも増大する。

   宅配業者に限らず、どんな業界・職種でも、似たようなことが起きている。まさに、日本全体がストレス社会。そして、ストレスが引き金となって、しばしば善良な市民がクレーマーと化す。サービスの提供者が客側(消費者)の立場になったとたん、クレーマーに変貌する「大クレーマー社会」の構図である。(援川聡)

援川 聡(えんかわ・さとる)
1956年生まれ。大阪府警OB。元刑事の経験を生かし、多くのトラブルや悪質クレームを解決してきたプロの「特命担当」。2002年、企業などのトラブル管理・解決を支援するエンゴシステムを設立、代表取締役に就任。著書に『理不尽な人に克つ方法』(小学館)、『現場の悩みを知り尽くしたプロが教える クレーム対応の教科書』(ダイヤモンド社)など多数。
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