「支離滅裂」型クレーマーに効く「聞き流し」テクニック

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「できること」と「できないこと」をはっきり告げる

   丁寧な物言いに変わったが、要するに金品の催促である。ここからは、「できること」と「できないこと」をはっきり告げる段階に入る。クレーマーとの力関係は、少しずつ変化していく。

   担当者「お客様のご指摘は、私どもにとって大変勉強になりました。ありがとうございます」

   まずは、こういう言い方で「終着点」をほのめかす。すると、クレーマーは最後の攻撃を仕掛けてくる。口調もガラリと変わった。

「あんたは、僕に敵意を持ってるとしか思えん。こちらに証拠がないことをいいことに、『知らぬ、存ぜぬ』か! 怖いなぁ。この一件が原因でウツになって、仕事ができんようになったらどうしようかと、不安になるわ」

   もはや支離滅裂。恐喝に近いとも言ってもいい。そこで、こう言葉を引き取る。

   担当者「では、どのようにすればよろしいでしょうか?」

   クレーマー「とにかく、佐藤の謝罪がほしい」

   担当者「はい、上司の私がお詫びさせていただきます。それでも、佐藤をクビにしろとか、土下座させろとおっしゃるのであれば、それは強要罪に当たり、私どもとしても看過できません」

   クレーマーは、担当者の丁寧かつきっぱりとした口調に少しひるんだようだ。

   クレーマー「それはわかっとる。クビとか土下座はしなくていい」

   担当者「よく言い聞かせ、今後の業務に生かすよう、しっかり指導してまいります」

   ようやく、クレーマーの「口撃」は収まった。そして、こう一言。

   クレーマー「その言葉を待っとった」

   負け惜しみであることは手に取るようにわかったが、「今後とも、ご贔屓にしてくださいますようお願いいたします」と、お礼を述べるにとどめ、クレームは収まった。(援川聡)

援川 聡(えんかわ・さとる)
1956年生まれ。大阪府警OB。元刑事の経験を生かし、多くのトラブルや悪質クレームを解決してきたプロの「特命担当」。2002年、企業などのトラブル管理・解決を支援するエンゴシステムを設立、代表取締役に就任。著書に『理不尽な人に克つ方法』(小学館)、『現場の悩みを知り尽くしたプロが教える クレーム対応の教科書』(ダイヤモンド社)など多数。
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