物欲しげな気配がびんびんと
値札が間違っていたことや、店員の接客態度が悪いという言い分に対しては、丁重にお詫びをするが、それ以上の要求に応じる必要はない。もちろん、女性店員をクビにしたり、土下座させたりするのは許されない。
このケースでは、こんなやりとりがあった。
クレーマー「あの女、挨拶もろくにできない」
担当者「申し訳ございません。従業員の指導を徹底して参ります」
クレーマー「チラシに『半額セール』と書いてあれば、誰だって買いたくなるよな。その値札が間違っていた!」
担当者「ご迷惑をおかけして、誠に申し訳ありません。お求めの商品をご用意いたしますので、お持ちください」
クレーマー「お宅の総菜は本当においしい。とくに揚げ物はエエものを売っとる」
担当者「ありがとうございます」
クレーマー「僕も会社では決算書を作ったりしとる。ビジネスマンとして、数字は気になるんだ。だから、いつも広告の値段やレシートをチェックはしている」
担当者「なるほど」
クレーマー「ぶっちゃけて言えば、証拠がないのに『金を返せ』とは言えない」
担当者「はい」
クレーマー「僕はこれでも、有名大学の法学部出身。司法試験には受からなかったが、法律には詳しいつもりだ」
担当者「そうですか。すごいですね」
クレーマー「金銭の問題じゃない。補償してほしいが誠意の問題だ!」
恐喝になるようなヘマはしないということらしいが、物欲しげな気配がびんびんと伝わってくる。同時に、クレーマーには手詰まり感が漂う。そして、ついに馬脚をあらわした。
「ホンマは『カネとかはいらん!』と言いたいんやけど、それでは気持ちが収まりません。僕の気持ちもわかってくださいよ。クレームがあったら、仮に客に過失があったとしても、手土産を持って謝罪に行くもんでしょう」