クレーマーが「一目置く」対応者とは

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担当者が「迷路」に踏み込まないようにサポート

   今も私は、クレームの現場をリアルタイムでサポートしているが、特に気をつけているのは、担当者が「迷路」に踏み込まないようにすることだ。

   とくに、ハードクレームに対応するとき、早く終わらせたい担当者は、とかく「近道」を探そうとする。しかし、それが失敗のもとである。クレームの現場にひとりで立つのは、寒風吹きすさぶ雪渓で深い谷底を見ているようなものだ。不安と恐怖でパニックを起こし、「クレバス」に転落するかもしれない。そこから脱出するための案内役が必要なのである。店舗やビルに非常口が準備してあるのと同じことだ。

   たとえば、小売店にクレームが持ち込まれたとしよう。担当者ができるだけ早く解決したいと思うのは人情である。しかし、面倒なことから手離れしたい一心で、金銭によって解決しようとしたり、メーカーにクレーム対応を丸投げしたりすると、かえって問題をこじらせてしまう。そんなとき、私が軌道修正をする。場合によっては、警察に相談したり、消費者センターなど関連機関との連携を図ったりすることもある。

   担当者自身、安易な方法では本当の解決にならないことを知っている。一時的に迷いが生じただけであることが多いのだ。あるいは、対応のしかたに95%の自信はあっても、残り5%に不安が残るということもある。そこで私は、担当者の背中をそっと押してやる。そうすることで、担当者はより安全な道に一歩を踏み出すことができる。

   私の携帯電話はいつも電源が入っている。(援川聡)


   以前紹介した『クレーム対応のガイドライン』を思い出してほしい。参考に再掲する。

I:基本方針:安易に金銭(物)で解決しない。「誠意」とはお金ではありません。

II:行動指針<クレーム対応の流れ>
1:スピーディな対応 →誠心誠意お詫びの姿勢
2:確実な実態把握 →上手に聞き、見極め判断材料を収集
3:悪質なものは組織(チームワーク)で解決→有機的な連携(警察相談・弁護士との協議を有効活用し組織連動)

   ちなみに、「モンスター」によるトラブル事例などを取り上げる、テレビ番組「教訓のススメ」(フジテレビ系、MCダウンタウン)が、あさって11月21日夜に放送予定(20日追記、1週延期に)で、私も出演し解説している。

援川 聡(えんかわ・さとる)
1956年生まれ。大阪府警OB。元刑事の経験を生かし、多くのトラブルや悪質クレームを解決してきたプロの「特命担当」。2002年、企業などのトラブル管理・解決を支援するエンゴシステムを設立、代表取締役に就任。著書に『理不尽な人に克つ方法』(小学館)、『現場の悩みを知り尽くしたプロが教える クレーム対応の教科書』(ダイヤモンド社)など多数。
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