「毅然と対応しなければならない」とは言うけれど
しかし、誰もが、できれば避けて通りたいのがクレーマーやトラブル対応の現場。こうした逃げ腰の企業姿勢や店舗の事なかれ体質にこそ問題がある。言いかえれば「組織の隙間という『闇』に巣食っている」のが、前述の「輩」なのである。
いつの時代も、こうした「輩」は存在する。どうすれば良いのか、模範解答はおそらくこうだ。「悪質なクレーマーには毅然と対応しなければならない」
顧客満足の講師は「お客様のご不満を満足に変える」「クレームを感謝の言葉に変える」と言う。そして、「悪質なクレームには毅然と対応するように」と達人の教えや正論・きれいごとを諭す。しかし、現実はそう簡単ではない。あるべき姿、理想・理念では分かっていても、対応するのは生身の人間。理想通りにはいかないし、ストレスはたまる一方だ。いきなり発生したクレームに、現場で対応しなければならない担当者は泣きそうにもなる。
悪質クレーマーに対しては、毅然とした態度で臨まなければならない――。この論には、いささかの疑いもない。
しかし、クレームの現場で毅然とすることは決して容易なことではないのである。担当者は、理想と現実の狭間で苦悩している。私自身も、警察から小売業に転職した当初は、クレーマーに毅然としたくてもできないという現実を前に、うろたえるばかりだった。
店員の接客にクレームが発生したケースで考えてみよう。もし自分が当事者だったらどのように対応すれば良いのか。
まず、店員の接客態度が悪いという言い分に対しては、丁重にお詫びをするが、それ以上の要求に応じる必要はない。もちろん、土下座をする必要はない。「無理です」「土下座はできません」ときっぱり断れば良いのである。
拒否しても、なお、しつこく強要すれば「強要罪」に該当する。
具体的なやり取りは次回、紹介しよう。(援川聡)