「正論」モンスターが「社会福祉」を襲う

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商品の「市場価値」以上の補償を求めることも

   モンスターが抱える思い入れの対象は、「人」であるとは限らない。商品やサービスについて強いこだわりをもっている場合も、トラブルを誘発しやすいだろう。

   たとえば、カーマニアにとって愛車はこのうえなく、いとおしいものである。着道楽にとってのブランド服しかり。いわゆる専門店で厄介なクレームが目立つのは、こうした消費者心理が働くからだ。

   また、贅沢品でなくても、そこに思い出が刻み込まれていれば、それはかけがえのない一品になるだろう。たとえば、「母の形見であるブローチがなくなった!」「恋人とのツーショット写真が破れてしまった!」「恩師に届けるはずの贈答品が破損している!」といったクレームを持ち込む人は、その商品の「市場価値」以上の補償を求めることがある。以前にも例に挙げた、「かけがえのない時間がぶち壊しだ!」と訴える老人の場合、形あるモノが傷つけられたわけではないが、思い入れの強さという点では同じである。

   ときとして、悪質クレーマーは、こうした理屈で詐欺まがいの脅しをかけてくるが、普段はまじめな人も「大切なもの」を粗末に扱われたと思い込んで、一気にモンスター化する可能性は大いにある。(援川聡)

援川 聡(えんかわ・さとる)
1956年生まれ。大阪府警OB。元刑事の経験を生かし、多くのトラブルや悪質クレームを解決してきたプロの「特命担当」。2002年、企業などのトラブル管理・解決を支援するエンゴシステムを設立、代表取締役に就任。著書に『理不尽な人に克つ方法』(小学館)、『現場の悩みを知り尽くしたプロが教える クレーム対応の教科書』(ダイヤモンド社)など多数。
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