商品の「市場価値」以上の補償を求めることも
モンスターが抱える思い入れの対象は、「人」であるとは限らない。商品やサービスについて強いこだわりをもっている場合も、トラブルを誘発しやすいだろう。
たとえば、カーマニアにとって愛車はこのうえなく、いとおしいものである。着道楽にとってのブランド服しかり。いわゆる専門店で厄介なクレームが目立つのは、こうした消費者心理が働くからだ。
また、贅沢品でなくても、そこに思い出が刻み込まれていれば、それはかけがえのない一品になるだろう。たとえば、「母の形見であるブローチがなくなった!」「恋人とのツーショット写真が破れてしまった!」「恩師に届けるはずの贈答品が破損している!」といったクレームを持ち込む人は、その商品の「市場価値」以上の補償を求めることがある。以前にも例に挙げた、「かけがえのない時間がぶち壊しだ!」と訴える老人の場合、形あるモノが傷つけられたわけではないが、思い入れの強さという点では同じである。
ときとして、悪質クレーマーは、こうした理屈で詐欺まがいの脅しをかけてくるが、普段はまじめな人も「大切なもの」を粗末に扱われたと思い込んで、一気にモンスター化する可能性は大いにある。(援川聡)