「団塊世代」に増えるモンスター 引退後「相手にされない」寂しさが暴発

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普段は孤独感や老いに対する恐怖心には蓋をして...

   一見したところ、子どもに外傷はなく、涙を拭った痕はあるものの、すでにケロリとしている。一緒にテーブルを囲んでいた若夫婦の説明によれば、満腹になった子どもが足をばたつかせて遊んでいるうちに、椅子から転げ落ちたらしい。大騒ぎするほどのことではない。

   ところが、老人はウエイターにつかみかからんばかりの剣幕である。ウエイターはなにがなにやらわからず、オロオロするばかりだ。

   八つ当たりとしか思えない老人の振る舞いだが、見かけはこざっぱりした、優しそうな好々爺だ。いったい、なにが老人を怒らせたのだろうか?

   じつは、こんな背景があった。この老人は70歳を間近に控え、ひとり暮らし。以前は、家庭で「フロ(風呂)、メシ(飯)、ネル(寝る)」としか話さないような亭主関白だったが、定年後、熟年離婚という形でそのツケが回ってきた。

   彼自身、このわびしさは身にしみてわかっている。普段は孤独感や老いに対する恐怖心には蓋をして、なんとか平穏に暮らしているが、ちょっとしたきっかけで、そのやるせない思いを暴発させてしまうのである。

   しばらく会っていない子どもや孫との外食には、大きな期待感を抱く。それだけに、店員のちょっとした不手際も許せない。

「テーブルが汚れている。すぐに布巾を持ってきなさい」
「子ども向けのメニューが少ないな」
「飲み物を注文したのに、まだ来ない」

   入店早々、ウエイターやウエイトレスに、なにかと文句を言っていた。

   もし、子どもたちのオーダーを忘れたり、孫がテーブルに頭をぶつけて泣き出したりしたら、烈火の如く怒り狂っていたかもしれない。

援川 聡(えんかわ・さとる)
1956年生まれ。大阪府警OB。元刑事の経験を生かし、多くのトラブルや悪質クレームを解決してきたプロの「特命担当」。2002年、企業などのトラブル管理・解決を支援するエンゴシステムを設立、代表取締役に就任。著書に『理不尽な人に克つ方法』(小学館)、『現場の悩みを知り尽くしたプロが教える クレーム対応の教科書』(ダイヤモンド社)など多数。
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