クレーマーは十人十色
「犯罪捜査にマニュアルはないのか?」
こんな質問をセミナーや講演で受けることもあります。しかし、捜査にはルールはあっても、現場で役立つような完璧なマニュアルは存在しません。
警察は犯罪を立証するために、資料や証拠を確保しなければなりません。その場合、「捜査関係照会書」や「任意提出書」などを準備して捜査にあたるのが基本ルールです。ただし、容疑が固まっていない段階でいかにして捜査情報を入手するか、その活動について細かな規定はありません。というより、犯罪捜査を完璧なマニュアルにすることは不可能なことは、皆さんにもお分かりのことでしょう。
数年前、中央官庁の窓口対応の手引書(マニュアル)を作成することになり、私も委員の一人として参画しました。何度か会議に参加して出来上がった時には、70ページを超える結構な分厚さになっていました。そして、完成したマニュアルを手にした官僚は「これで一安心」と満足そうでしたが、私は「マニュアルができても安心できませんよ」と釘を刺すのを忘れませんでした。なぜなら、クレームは人の心の中で発生する「不満・指摘・要望」でもあるわけです。
クレーマーは十人十色、その目的や動機も千差万別なのです。言いかえれば人の「心の闇」に明確な基準がないように、ホワイトモンスター全般に通用するマニュアルなどはありません。
例えれば「爬虫類図鑑や昆虫図鑑」のように何万種も種類があるとも言え、さらに不安な社会情勢の中で、日々新たな新種が発見されている状況なのです。
苦労してマニュアルを作り上げても、いざという時に役立たないのですから、それよりも現場で重宝されるのは『クレーム対応のガイドライン』です。こちらの作成をお勧めします。次回は、そのガイドライン作りについて解説します。(援川聡)