「苦情対応マニュアル」あっても安心できない 通用しない「新種モンスター」が続々

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クレーマーは十人十色

   「犯罪捜査にマニュアルはないのか?」

   こんな質問をセミナーや講演で受けることもあります。しかし、捜査にはルールはあっても、現場で役立つような完璧なマニュアルは存在しません。

   警察は犯罪を立証するために、資料や証拠を確保しなければなりません。その場合、「捜査関係照会書」や「任意提出書」などを準備して捜査にあたるのが基本ルールです。ただし、容疑が固まっていない段階でいかにして捜査情報を入手するか、その活動について細かな規定はありません。というより、犯罪捜査を完璧なマニュアルにすることは不可能なことは、皆さんにもお分かりのことでしょう。

   数年前、中央官庁の窓口対応の手引書(マニュアル)を作成することになり、私も委員の一人として参画しました。何度か会議に参加して出来上がった時には、70ページを超える結構な分厚さになっていました。そして、完成したマニュアルを手にした官僚は「これで一安心」と満足そうでしたが、私は「マニュアルができても安心できませんよ」と釘を刺すのを忘れませんでした。なぜなら、クレームは人の心の中で発生する「不満・指摘・要望」でもあるわけです。

   クレーマーは十人十色、その目的や動機も千差万別なのです。言いかえれば人の「心の闇」に明確な基準がないように、ホワイトモンスター全般に通用するマニュアルなどはありません。

   例えれば「爬虫類図鑑や昆虫図鑑」のように何万種も種類があるとも言え、さらに不安な社会情勢の中で、日々新たな新種が発見されている状況なのです。

   苦労してマニュアルを作り上げても、いざという時に役立たないのですから、それよりも現場で重宝されるのは『クレーム対応のガイドライン』です。こちらの作成をお勧めします。次回は、そのガイドライン作りについて解説します。(援川聡)

援川 聡(えんかわ・さとる)
1956年生まれ。大阪府警OB。元刑事の経験を生かし、多くのトラブルや悪質クレームを解決してきたプロの「特命担当」。2002年、企業などのトラブル管理・解決を支援するエンゴシステムを設立、代表取締役に就任。著書に『理不尽な人に克つ方法』(小学館)、『現場の悩みを知り尽くしたプロが教える クレーム対応の教科書』(ダイヤモンド社)など多数。
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