「己の非、完全無視」の消費者はその時… 「悪びれる様子もなく」こう言い放った

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ほかの一般消費者と一緒に「包囲網」

   一般にマスコミの論調や世論は、企業や行政機関、病院、学校などの「組織」に対してアゲインストであり、ひとたび問題が生じればいっせいにバッシングに走る傾向が強い。組織は社会性や公共性を意識している分、弱腰にならざるを得ない。

   その反面、「個人」はモンスターと呼べる輩であっても、消費者、患者、生徒という「弱者」のレッテルが貼られている。

   そこにインターネットの登場である。インターネットによって、個人は強力な情報発信の手段を手に入れ、以前とは比べものにならない圧力を組織にかけることができるようになった。いわば、「腕力の強い弱者」の誕生である。

   かつて、クレームの持ち込み先は企業が設けたサポートセンターの窓口ぐらいしかなかったが、いまは苦情をメールで送りつけたり、携帯電話で撮影した写真や動画をネット上に公開したりすることができる。

   なかには、自分のホームページで企業や団体の批判記事を書き立て、苦情メールを送るように閲覧者を煽動するという手の凝ったことをする者もいる。担当する部署では毎日、同じクレームを何件も処理しなくてはならない。

「当社のホームページを細かくチェックし、重箱の隅をつつくような質問をしてくる。嫌がらせとしか思えない」

   企業や団体は、その社会的責任として利害関係者に対する説明責任があり、その一環としてホームページなどでさまざまな情報を公開している。一方、個人情報へのアクセスは個人情報保護の見地から制限されている。個人と企業には、明らかに「情報格差」が存在する。

   いずれにしても個人は、組織に「直接対決」を挑まなくても、ほかの一般消費者と一緒に「包囲網」を敷き、「消費者全体への裏切り行為だ!」などと、絶対多数を背景に攻め込めるわけだ。(援川聡)

援川 聡(えんかわ・さとる)
1956年生まれ。大阪府警OB。元刑事の経験を生かし、多くのトラブルや悪質クレームを解決してきたプロの「特命担当」。2002年、企業などのトラブル管理・解決を支援するエンゴシステムを設立、代表取締役に就任。著書に『理不尽な人に克つ方法』(小学館)、『現場の悩みを知り尽くしたプロが教える クレーム対応の教科書』(ダイヤモンド社)など多数。
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