社内という「密室(温室)」でやりたい放題
仕事でミスをすれば、上司や先輩に叱責されるのは当たり前である。しかし、なかには「業務上の指導」を名目に、いじめや嫌がらせをする「社内モンスター」がいる。
「大勢の面前で罵倒されるのは日常茶飯事。ちょっとでもミスをすると、『役立たず』と怒鳴られる。失敗しなくても『いい気になるなよ』と冷たくあしらわれる。仕事ができる、できないという以前に、ひとりの人間として認めてもらっていない」
「課長は論理をすり替える名人。無謀な販売計画を立てても『お客様のため』などと理屈をつけて部下を説き伏せる。しかし、実際は単に自分の社内評価を上げたいだけ。目標を達成できないと、部下の誰をスケープゴートにする」
あなたの周囲に、こんな上司や先輩はいないだろうか?
職場は地域社会と同様、いやそれ以上に「しがらみ」がキツい。毎日、イヤな上司や先輩とも顔を合わせなければならない。理不尽なことを要求されても、家族を養うためには、おいそれと会社を辞めるわけにもいかない。
その一方で、職場のいじめや嫌がらせは表面化しにくい。仲のいい同僚も、自分が標的になるのを恐れて、見て見ぬふりをすることもあるだろう。組織ぐるみで口裏を合わせて、隠蔽工作をすることがあるかもしれない。
多くのモンスター上司は、社内という「密室(温室)」のなかでやりたい放題である。
会社役員だった50代の男性は、自分のキャリアを振り返りながら告白する。
「社内政治に目を向けた『内向き』や、上司の目ばかり気にする『上向き』。あるいは、責任の『押しつけ』、面倒なことの『丸投げ』、指示の内容を何度も確認させる『ぶり返し』。会社ではこうした処世術がまかり通っていた。私もその環境のなかで、上司にたたかれ、部下をたたいてきた。しかし、こんなふうに上司にたたかれるのも、部下をたたくのも嫌になった」
この男性は定年を待たずに退職し、いまは行政書士として独立開業している。(援川聡)