元刑事が直伝、「職場のモンスター」対処法

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   私は、大阪府警のOBです。現役時代は、オウム真理教の信者を検挙(逮捕)するなど、ふつうの生活から考えるともはや「得体のしれないモンスター」とも言える人々と渡り合ってきました。

   そんな経験を生かし、今ではクレームを解決し危機管理を援護する会社を経営しています。この連載では、主に会社生活における内外の「モンスター」への対処法を紹介していきたいと思います。

「理不尽の壁」にぶち当たった

またクレームの電話が?
またクレームの電話が?

   初回は、私個人の体験を振り返ります。

   警察官の生活は、世の中からはみ出た人たちと向き合わなければならない、とてもストレスフルな毎日です。テレビで、「警察官がいろいろな重圧に押しつぶされて自殺」などというニュースを見ると、今なお、我がことのように心が痛いのです。

   私は、子供のころから人一倍正義感が強くて警察に入ったとは言い切れない弱い人間ですが、恩師に出会い、警察という「この道」をまっとうしたいと心に決めていました。しかし、初心を忘れかけていた時期に、ある上司の不正という「理不尽の壁」にぶち当たってしまったのです。

   正しくあるべき警察官が不正をはたらくとは、――今すぐにでも上司に噛みつこうとする勢いの私を、先輩刑事がやんわりと止めに入りました。

「そんなん放っといて自分の仕事を頑張りや。あんなおっさんと勝負してもしゃあないで」

   要するに、上司に真正面から噛みついても、痛い目見るだけやとの忠告です。

   先輩刑事は自分の仕事はきっちりこなしながらも、その件はあまり大事のようには思っていなかったのでしょうか。白黒つけることをせず、のらりくらりとやりすごしていました。

「でも、わたしたちは警察です。見逃していいのか!」「ほっとけない!」

   警察社会というのは、表向きは正義感が強い人間の集まりです。しかし同時に、「組織」が重視されるところでもあります。実際にその中に身を置くと、正義感だけではどうしようもない社会の「埃や垢」がこびりつきます。また、大きな事件を手掛けたい、手柄を立てて昇進したいという自己顕示欲、さらには上司や同僚たちへのひがみやねたみといった男の嫉妬が、渦を巻いていることがわかります。

援川 聡(えんかわ・さとる)
1956年生まれ。大阪府警OB。元刑事の経験を生かし、多くのトラブルや悪質クレームを解決してきたプロの「特命担当」。2002年、企業などのトラブル管理・解決を支援するエンゴシステムを設立、代表取締役に就任。著書に『理不尽な人に克つ方法』(小学館)、『現場の悩みを知り尽くしたプロが教える クレーム対応の教科書』(ダイヤモンド社)など多数。
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