映画やテレビドラマ、ドキュメンタリー、本などに触れて、涙を流した後に、心が洗われたような気持ちになった経験はありませんか。
涙を流すことには、ストレスを解消する大きな効果があります。号泣することで、ストレス状態にある脳を一時的にリセットする効果もあるようです。疲れが溜まっているな、緊張が続いているなと思ったら、涙を流す機会を作ってみることをオススメします。
リラックスとは「副交感神経が興奮している状態」
ストレスを受けると、人間の身体には一定の反応が起こります。大切なプレゼンの前などには、胸がドキドキして冷汗をかき、呼吸も浅く速くなります。空腹であることすら忘れてしまいます。
これはすべて「交感神経」が興奮していることの表れです。交感神経と、反対の作用をする「副交感神経」とを合わせて「自律神経」といいます。
自律神経とは、自分の意思とは無関係に働く神経のこと。心臓や肺、消化器などの臓器や血管などに分布しており、状況に応じて片方の神経が興奮します。
つまりストレスから離れたリラックス状態というのは、神経が完全に休んでしまっている状態というわけではなく、「副交感神経」が興奮している状態なのです。
東邦大学・有田秀穂教授の研究によると、何かに感動して涙があふれるときには、共感に関与する脳の「内側前頭前野」の血流増加が起こり、このことで極端な副交感神経の興奮状態が引き起こされるのだそうです。
涙を流した後は、意外にもスッキリさわやかな気分になるはずです。このさわやかな気分こそ「副交感神経の興奮」によって得られる究極のリラックス状態です。涙がストレス状態をリセットして、朗らかな気持ちをもたらしてくれるというわけなのです。
通勤途中の風景を立ち止まって見てみる
ただし、涙を流せばどんなやり方でもいいというわけではありません。副交感神経を活性化させるために、何らかの出来事に共感して涙が自然とあふれる状況が必要です。
たまねぎを切ったり、痛みを加えたりして意図的に流す涙では、ストレスを軽減するどころか、かえって増強することになるのは言うまでもありません。
映画やドラマなどの「作り物」では涙を流せないという人は、通勤途中の風景を立ち止まって見ながら、自分の親や家族がいるありがたさや、友人や同僚がいなくなってしまうさみしさを考えてみてはどうでしょう。
そのとき目に浮かんだ涙は、心を洗う効果があります。もしも涙が出なくでも、いま当たり前だと思っていることは、実はとても幸せなことだとあらためて感じることができるのではないでしょうか。
「ストレスを解消するために、周囲に感謝しなさい」というのでは、おかしな話になってしまいますが、お酒を飲んだりカラオケで歌ったりする以外に、こんな方法もあるということが参考になれば幸いです。