睡眠を取ることは、私たちにとって単に身体を休ませること以上の意味があります。成長ホルモン分泌による身体の修復、免疫機能の維持、記憶や判断、情動など大脳で営む高次脳機能の休息など、さまざまな役割があります。
良質な睡眠を確保し、疲れた心身を十分に回復させることが、ビジネスパーソンの重要なストレス対処術といえるでしょう。
最高のパフォーマンスは「最良の睡眠」から
実は日本人の約2割が、寝付きが悪かったり(入眠困難)、途中で目が覚めてしまったり(中途覚醒)と、何らかしらの不眠症状を有しているといわれています。
不眠は、単に眠れなくて不快ということだけでなく、それが原因で記憶力や判断力が弱まったり、感情のコントロールが鈍ってしまうこともあります。
これにより、日中の仕事がはかどらなくなると、結果的に仕事で大きなストレスを抱え、ますます不眠に陥ってしまうという悪循環を生みかねません。
それでは、どの程度の睡眠時間をとれば最適といえるのでしょうか。「最低6時間だ」「8時間はとりたい」などという声も聞かれますが、研究によれば、最適な睡眠時間は遺伝的要素や後天的な生活習慣などによって個人差が大きいといわれています。
エジソンは平均睡眠時間が3時間程度であったのに対し、アインシュタインは10時間も寝ていたという話もあります。
とはいえ、睡眠時間が5時間を切るような状態が長期間継続すると、うつ病をはじめとするメンタルヘルス不全になりやすくなるという報告もあります。ビジネスパーソンの「寝てない」自慢は不毛です。最低限の睡眠時間を確保するために、睡眠以外の優先順位を考えて行動する必要があるでしょう。
また、良質な睡眠とは、長ければ長いほどよいわけではなく、翌朝に疲労感や眠気が残らない睡眠を目指すべきです。約90分の周期で交互に現れる「浅い眠り(レム睡眠:身体の休養に役立つ睡眠)」と「深い眠り(ノンレム睡眠:大脳を休ませるための睡眠)」の睡眠パターンを維持することが重要です。
このパターンを維持するために、睡眠時間を3時間(レム睡眠+ノンレム睡眠)で割り切れるように起床6時間前に就寝する人もいるようです。また、眠りが途切れたり浅くなったりしないように、就寝前の日常生活に気をつけたり、就寝環境を工夫したりすることも考えられます。
押さえておきたい「快適睡眠3か条」
日頃から良質な睡眠を確保するために、重点的に気を付けるべきことを3つ挙げてみます。
1.運動を取り入れ、嗜好品を控える
夕方からの適度な運動習慣は寝付きを助け、熟睡をもたらす効果があります。逆に、就寝4時間前からのカフェイン摂取(コーヒー・紅茶・緑茶など)や、就寝1時間前からの喫煙は、睡眠の質を低下させます。睡眠薬代わりの寝酒も眠りの質を低下させ、飲酒量の増加につながるおそれもあるので望ましくありません。
2.睡眠環境を整える環境が変わると寝付けない人がいるように、睡眠をとる際の環境作りは重要です。事情が許せば、日常生活をする場所と睡眠を取る場所を切り分けることで、リラックスして睡眠をとる環境を確保しましょう。照明器具やカーテン、窓に工夫をして、静けさと暗さを作り出したり、温度や湿度に気を配ったりすると効果的です。
3.起床後には十分な日光と朝食を規則正しい生活習慣を確保することは、リズムの整った良質な睡眠を確保する上では重要です。毎朝決まった時間に起床し、起床後にはしっかりと日光を浴びることで、メラトニンという眠気のホルモンの産生が抑えられ、身体がシャキッとし、体内時計が正常に働き始めます。また、規則正しい朝食習慣は起床前から消化器の働きを活発することで、朝の起床を助けることになります。
どうも寝起きがすっきりしないという人の中には、心当たりがある人もいるのではないでしょうか。
不眠はメンタルヘルス不全の徴候のひとつです。寝付けない日々が続く、寝たはずなのに寝た気がしない、朝起きられない、眠っても日中の眠気が強いなどの症状がある場合には、早めに医師に相談をするようにしましょう。