怒りっぽい人が「心筋梗塞」で倒れるのにはワケがある

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   強いストレスや継続的なストレスは、心の病の原因となることがありますが、そればかりでなく「身体の病」を引き起こすことがあります。ストレスにさらされるビジネスパーソンは、それによって生じやすい身体的反応やメカニズムについて、十分理解しておくことが必要です。

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ホルモンの過剰分泌が悪さをする

緊張状態が続くと風邪を引きやすくなる
緊張状態が続くと風邪を引きやすくなる

   大切な会議でプレゼンテーションをしたり、上司から強く叱られたりしたときには、動悸が激しくなったり、普段以上に汗をかいたりすることが自覚できます。これは、身体がストレスに反応しているあらわれです。

   このときに身体の中で起こっていることを覗いてみると、さまざまなホルモンが動悸や発汗に作用していることがわかります。

   たとえば、会議をうまく乗り切ろうと考えるときには、気持ちを奮い立たせて臨みますが、このようなとき身体は、「カテコールアミン」というホルモンを分泌して交感神経を優位にし、戦闘態勢をつくります。

   このホルモンによって、心臓の動きを活発にしたり、血管を収縮させて身体の必要な部位に血液をたくさん送ったりすることができます。

   また、人間が活動を行うためには、血糖値を上昇させてエネルギーをいつでも活用できるようにすることが必要ですが、この状態を維持するためには「副腎皮質ホルモン」の分泌が欠かせません。

   しかし、これらの作用が働きすぎると、高血圧になったり、心筋梗塞のリスクが高まったりします。

   ケガをしたときに出血が自然と止まるのは、血小板の働きによるものですが、カテコールアミンには血小板の働きを促進する作用があるため、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こしやすくなるのです。

   また、緊張状態が続いて副腎皮質ホルモンが過剰に分泌され、血糖が上昇した状態が続くと、糖尿病のリスクが高まることになります。また、白血球やリンパ球などによる免疫機能を低下させる作用もあるため、風邪などに感染しやすくなります。

緊張と緩和のバランスが重要

   ただし、同じストレスにさらされた場合でも、人によって反応は変わってきます。それは、刺激に対する反応に対するスタンスや、「性格」の相違によるものです。昔から、

「怒りっぽい人は、心筋梗塞が多い」

といわれていますが、それは刺激に対して他人よりも反応しやすく、気の短い人や攻撃的な人は、ホルモンが過剰に分泌されていることが原因の一つと思われます。

   また、日本の社会は他人に対して敵意や攻撃性をあらわにしくにいと言われますが、自分の要求を他人に上手に伝えなかったり、他人からの要求に常にさらされたりする状態が続くと、ストレスに過剰に適応している状態が続いていることも考えられます。

   このような状態は、前述のホルモンが過剰に働いているので、身体の病気になりやすくなっています。つまり、怒りっぽくても、溜め込みすぎてもよくないということで、何事も穏やかにうまく処理していけるよう、感情をコントロールすることが重要です。

   健康管理の方法として、運動や食事だけでなく、ストレスとの付き合い方が課題であることを自覚するだけでも、大きな病気の回避に近づけるのではないでしょうか。


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今回の筆者:友常 祐介(ともつね・ゆうすけ) 筑波大学大学院 人間総合科学研究科産業精神医学・宇宙医学グループ所属。労働衛生コンサルタント。筑波研究学園都市で働く研究者のメンタルヘルスに関する研究で医学博士を取得。現在、日本原子力研究開発機構などで産業医を務め、幅広い健康管理に携わっている。

筑波大学大学院・松崎一葉研究室
高度知的産業に従事する労働者のメンタルヘルスに関する研究を行い、その成果を広く社会還元することを目指している。正式名称は筑波大学大学院人間総合科学研究科 産業精神医学・宇宙医学グループ。グループ長は松崎一葉教授(写真)。患者さんを治療する臨床医学的な視点だけではなく、未然に予防する方策を社会に提案し続けている。特種な過酷条件下で働く宇宙飛行士の精神心理面での支援も行っている。松崎教授の近著に『会社で心を病むということ』(東洋経済新報社)、『もし部下がうつになったら』(ディスカバー携書)。
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